ソニーの新型aibo(アイボ)を、「弱いロボット」研究者の岡田美智男氏(豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授)はどう見たのか。岡田氏のインタビュー後編では、岡田氏が開発する「弱いロボット」のコンセプトを通じて、aiboの魅力をさらに高めるヒントを探る。(聞き手=内山 育海、構成:赤坂 麻実)




 私たちの研究室で、学生たちと一緒に新たなロボットの企画を考えようとすると、必ずといっていいほど「○○してくれるロボット」という捉え方をしがちです。それでは、「してくれる」ロボットと「してもらう」人という関係・役割が固定的になりやすく、人とロボットの役割の間に線が引かれてしまい、インタラクションとしてはプアで退屈なものになりやすいのです。

豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授の岡田美智男氏
[画像のクリックで拡大表示]

 人と関わるロボットの機能が自己完結するのは、そもそも原理的に不可能なことのように思われます。例えば、ロボットが人にポケットティッシュを渡そうとするとき、そのロボットがティッシュを差し出しても、その人が受け取ってくれなければ、ティッシュを受け渡すことにならない。行為として完結しないわけです。

 その意味で、人とのインタラクションを前提としたロボットは元来、不完結な存在なのです。それを無理に自己完結させようとして、さまざまな制御プログラムを作り込むよりも、「不完全さ」や「弱さ」を前提として、人とロボットがうまく補い合う関係を生み出せたら、人とロボットが一緒にいる意味も生まれるのではないかと思うのです。

 そんな「弱いロボット」の一例が、ICD-LABで最近開発を進めてきた「iBones」です。iBonesは、目の前を通りかかる人にポケットティッシュを渡そうとするのですが、歩く人に手を差し出すタイミングがなかなか合わず、手を差し出しては、また引っ込める。この振る舞いは、どこかモジモジしているように見えるようで、そんな様子を誰かが見ていてくれると「ちょっと手伝ってあげようかな……」と近付いてきてくれます。iBonesはティッシュを手渡すというより、上手に受けとってもらうような手助けをうまく引き出しながら、目的を果たすものです。先日は、東京駅のお菓子ランドにて、お菓子(ブラックサンダー)のサンプルをモジモジしながら手渡すようなイベントを開催し、成功を収めたばかりです。

モジモジしながらティッシュを配ろうとするロボット「iBones」(出所:豊橋技術科学大学 ICD-LAB)
[画像のクリックで拡大表示]

 このように、ロボットが適度に自らの〈弱さ〉を他の人に開示できると、人とのインタラクションやコミュニケーションを豊かに膨らませられるのではないかと思います。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は登録月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら