ここのところ、米アマゾン・ドットコム(Amazon.com)の金融サービス事業に向けた取り組みの話をよく耳にする。Amazon自らが金融事業について何らかの発表をしたわけではないが、様々に漏れ伝わる話をつないでいくことで、同社が次に狙うサービスの輪郭が見えてくる。

 2018年3月、Amazonは当座預金に似た金融サービスの開発を目的に、米国の大手銀行と協議していると複数のメディアが報じた。この話題を最初に報じた米Wall Street Journalによると、Amazonは銀行と提携し、若年層の顧客や銀行口座を持たない顧客に訴求できるサービスを提供する可能性がある。

 例えば、顧客がAmazonのサイトで買い物をする際、Amazonに登録したクレジットカードではなく、Amazonブランドの銀行に開設した自分の口座から直接、商品の代金を支払えるようになる。このほか、顧客が小切手を切ることができたり、ATM(現金自動預払機)を利用したりできるようになることも考えられると、Wall Street Journalは伝えている。

 この計画に関し、Amazonは2017年秋に数行の銀行から提案を募った。今は米大手銀行のJPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)と米地銀大手のキャピタル・ワン(Capital One)などから出された案を比較、検討していると、事情に詳しい関係者は話している。仮にAmazonブランドの銀行口座サービスが立ち上がれば、同社は商品販売の決済時に金融サービス企業に支払っている決済手数料を削減したり、顧客の収入や支出に関する行動データを得たりできるようになる。

Amazon PayをAlexa開発部門に統合

 もう1つ興味深いのは、Amazonのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)最高経営責任者(CEO)が2017年に、複数の幹部に対し、金融サービスに取り組むプロジェクトを推し進めるよう命じたと報じられていることだ。同社は、組織再編も行い、「Amazon Pay」をAlexa開発の部門に組み入れたという。

 Amazon Payとは、Amazonが他社のeコマースサイトに決済手段を提供するサービスだ。顧客はAmazonのアカウントを使ってeコマースサイトにログインし、Amazonに登録したクレジットカードで決済できる。同社はこれにより手数料収入を得ている。一方のAlexaは、AI(人工知能)を利用した音声アシスタントサービスである。日本でも本格的な販売がはじまったスマートスピーカー「Amazon Echo」を通じて提供している。

 AmazonがAmazon PayとAlexaの開発部門を統合した目的は、今のところ明らかでない。ただ同社はAlexaを使い、利用者同士がお金のやり取りをできるようにするサービスを開発しているとも伝えられている。

 この計画は、Bezos CEOが推し進める金融サービスに関する、より広範な事業計画の一環だとWall Street Journalは伝えている。例えばBezos CEOは、ドライバーがガソリンスタンドでガソリン代を払う際、クルマに搭載されたAlexaを使って音声命令で支払えるようにする仕組みも検討しているという。

AmazonのJeff Bezos最高経営責任者(CEO)
(出所:Amazon)
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AIアシスタントがプラットフォームに

 Amazonは前述したAmazon Payの仕組みを、eコマースサイトだけでなく実店舗にも展開することを検討していると伝えられている。これら漏れ伝わってくる情報を整理してみると、次のような事業展開の可能性が見えてくる。

・Amazonブランドの銀行口座
・音声アシスタント(Alexa)による個人間送金
・社外eコマースサイト向け決済サービス(Amazon Pay)とAlexaの連携
・Alexaによる実店舗決済
・Amazon Payの実店舗展開

 Amazonが、これらを統合した包括的な金融サービスを計画しているのかどうかは、今のところ分からない。ただ、同社が決済サービス事業の規模拡大を狙っており、そのプラットフォームとして音声アシスタントの活用を考えていることは確かなようだ。

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