「ツールXが起動するのは、システムAとシステムB、またはシステムCが特定の条件になるときである」。

 手渡された仕様書にこんな一文があったとき、あなたならどんなシステムを作るだろうか。

 この仕様書の書き手は、ツールXが起動する条件を以下のいずれかと想定していた。

 ・システムAとシステムBの両方が特定の条件になる
 ・システムAとシステムCの両方が特定の条件になる

 しかし、この文章を受け取った人は、書き手の想定通りに理解するとは限らない。実際、この仕様書を見た開発者は、ツールXが以下のどちらかの条件のときに起動するプログラムを作り上げた。

 ・システムAとシステムBの両方が特定の条件になる
 ・システムCが特定の条件になる

 この文章の問題点は、「と」と「または」が同時に登場していることにある。「と」はAND条件、「または」はOR条件を示す言葉。この両方が同じ文中に並んでいることで、何がAND条件で何がOR条件かが不明確になる。読む人によって、異なる解釈をしてしまう可能性がある。

 「仕様書の不備に気づかずにソフトウエア開発を進め、あとから不具合に気づくことは実際にある。大幅な手戻りが発生し、修正の負荷やコストが掛かってしまう」。コンピュータハウス ザ・ミクロ東京の豊田倫子代表はこう話す。豊田氏は、企業の業務システム導入支援やマニュアルなどの技術文書作成を長く手掛け、日経ITエンジニアスクールで「伝わる文章の査読・指導スキル養成講座」の講師も務める。

 冒頭の文章は、現実に豊田氏が遭遇した仕様書が基になっている。実際にこうした仕様書が基で要求仕様と異なるシステムが出来上がってしまい、トラブルになったという。

 この例が示すように、開発プロジェクトを問題なく進めるために、文章力は欠かせない。「ビジネスの現場において、文章はコミュニケーション手段の一つ。早く、正確に情報を伝えられる力が技術者には求められる」(豊田氏)。

文章上手ほど、仕事が早く進む

 トラブルには発展しないまでも、文章力の不足は仕事の停滞を招きがちだ。開発プロジェクトでは、コミュニケーションが文章のやり取りだけで実施されることも多い。プログラム開発とテストを別々の企業が担当し、担当者同士は顔を合わせずメールなどでやり取りを重ねることもある。

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