35年前、記者が学生時代にコンクリート工学の授業を受けた時、担当教授がこう力説したことを思い出す。「コンクリートのひび割れを減らすには、単位水量の低減が一番効く。大事なことだから、よく覚えておきなさい」

 当時、建築や土木を学んだ学生は、コンクリート工学の授業でこの原則を叩き込まれたはずだ。「三つ子の魂百まで」ではないが、若い頃に教えられた理論は簡単には抜けきらない。記者の頭の中では、長年にわたり「単位水量低減=ひび割れ抑制」という法則が支配していた。

コンクリートのひび割れを減らすには、単位水量の削減が最も効果的――。これは多くの技術者にとって定説だったが、最新の研究で粗骨材の種類でもひび割れリスクが大きく変わると分かってきた。写真は千葉県内のマンションの建設現場(写真:日経 xTECH)
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 記者のそんな“単位水量信仰”が、ある技術者への取材で覆された。その技術者とは鹿島技術研究所の閑田(かんだ)徹志氏だ。ひび割れ制御に関する論文で日本建築学会賞を受賞したこの分野の第一人者である。2012年秋、記者が閑田氏に取材したとき、こんな話を聞かされた。「確かに単位水量の管理は昔も今も重要です。しかし、最近の研究で、ひび割れにもっと大きな影響を与える要因が浮かび上がってきました。粗骨材の収縮です」

 そう言って、閑田氏が記者に見せてくれたのが下の図だ。全国各地の生コン工場を対象にコンクリートの乾燥収縮率(ひび割れに直結する指標)の違いを調べたものだ。グラフから、生コン工場による乾燥収縮率のばらつきが非常に大きいことが分かる。最小値は450μ(マイクロ=ひずみの単位=10のマイナス6乗)に過ぎないが、最大値は1200μもあり、その差は750μにもなる。

全国各地の生コン工場を対象に、コンクリートの乾燥収縮率の違いを調べたもの。横軸はμ(10のマイナス6乗)を基準にしたひずみ量を示している(資料:鹿島)
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