プロジェクトでも日々の業務でも、失敗しては困るから「失敗するな」と上司が部下に注意する。だが、注意し続ければ失敗しない、とは言い切れない。熱心に注意したにもかかわらず失敗してしまうこともある。

 真面目なのか、心配性なのか、しきりに注意する上司がいる。進捗を気にして「遅れはないか」と確認する。品質を気にして「テストをしっかりやったか」と質問する。部下の調子を気にして「残業をやり過ぎていないか」「具合の悪い人はいないか」と声をかける。進捗や品質や健康に問題があれば直ちに対策を立て、実行するように命じる。

 プロジェクトであれば上司とは別にプロジェクトマネジメントオフィスと呼ばれる組織が置かれ、そこからも注意される場合がある。日々の仕事でも品質管理部門、監査部門などから注意される。

 注意を徹底する上司は「しっかりしている」と社内で評価される。失敗することがあっても「あれだけきちんとやったのに失敗したのは案件があまりにも難しかったからだ」と上の方から弁護され、経歴にさほど傷が付かなかったりする。

仕事に重大な影響を与える何かを見落とす

 真面目で注意に余念のない上司がいて、さらにあれこれ注意するスタッフ部門がいて、それでも失敗する理由は大きく2つある。仕事全体に影響を与える重大な何かを見落とす、職場の雰囲気を悪くする、である。

 「仕事全体に影響を与える重大な何か」として「前提」がある。「そうなっているはず」「そうなるはず」と思い込んで仕事を進めたが、前提が崩れた途端、その悪影響に対処できず失敗してしまう。前提が明示されていた場合、明示されていなかった場合、両方あり得るが、どちらにしても日々の確認の対象外であったとすると前提崩壊は突然の出来事になり、対処できなくなってしまう。

 例えば情報システムの開発案件において「システムの仕様について主要な関係者の合意を発注側が取り付ける」という前提があったとする。文書に記載されている場合、口頭でそういう話をした場合、両方あり得るが、どちらにしても受注側は「関係者の合意はもう取れているはず」として開発を進める。口うるさい上司もスタッフ部門も「関係者の合意は大丈夫か」とは聞いてこない。ところが、後になって合意が取れていなかったと分かったり、当初合意していた重要な関係者が異を唱えたりすると問題が生じる。

 上司やスタッフ部門が進捗や品質について口うるさく確認し続けると、現場の担当者の意欲を下げ、雰囲気を悪くさせてしまう恐れがある。例えばある部分の遅れに現場が気付き、自分たちなりに対策を考え、手を打とうとしている矢先に、上司やスタッフ部門から「遅れていると聞いた。直ちに遅れを取り戻せ」と叱られたとしよう。遅れているのは確かだから反論できないが、現場の担当者は「そのくらい分かっている」とつぶやきながら対策を急ぐ。

 こういうことが繰り返されると現場の士気は下がっていく。「そんなに言うならお前が自分でやれ」と毒づいたり、「言われた通りやればそれでいい」と投げやりになったりする。

 言われた通りにやるだけなら、あれこれ考えなくて済むので現場の担当者としては楽になる。あらかじめ決めておいた日程や条件に合っているかどうかを確認するだけなら上司もスタッフ部門も実はたいして考えなくて済む。仕事に関わる人の多くが考えなくなったら失敗は約束されたようなものである。

 失敗したとしても言い訳ができる。現場の担当者は「上司やスタッフ部門の指示通りにやった」と言い、上司は「社内の規定に沿ってしっかり管理した」と説明する。組織の上部に接しやすい上司は言い訳において有利である。先に述べた「失敗しても経歴に傷が付かない上司」は失敗だと気付くと自分より上の方に「発注側が前提を変えたから」「現場が力不足」と素早く報告し、自分の処遇については事なきを得る。

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