「上が駄目なので」と言ったりする。上は上司だが駄目とは何だろう。「駄目」を広辞苑第三版で引くと「囲碁で双方の境にあってどちらの地にもならない空所」「しても効のないこと。むだ。無益。してはいけないこと」と出ていた。

 もともとの意味に従うと「上司が出した指示が駄目」とは言えても「駄目な上司」とは言えない気がするが題名を先に決めて書き始めたので「組織や部門の境にいてどちらの役にも立たない空っぽな人」と定義して話を進める。

駄目な上司が優秀と呼ばれる

 例えば課長は課員からすると上司であり他の課や上の部の境にいる。課員が何かに困り隣の課や部全体と調整が必要になった場合、まず課長に相談する。課長は自分の課の都合と課員の都合、他の課の都合、部長の都合を勘案し、何らかの行動をとる。そうした際の「駄目な上司」の例をいくつか挙げてみよう。

長いものに巻かれる:部長にお伺いを立て言われた通りにする。隣の課長が先輩ないし実力者の場合やはり言われた通りにする。部下の課員が困ってしまっても「決まったことだ」「そのくらい何とかしろ」「上から言われて私も辛い」などと言う。

放置する:本来であれば「何らかの行動をとる」はずだが判断せず動かない。部下の課員が催促すると「まあ待て」「君に任す」などと言う。

とりあえず進める:部下の課員が提案したやり方を部長や他の課長に伝えて部下に進めさせる。うまくいけばそれでよいが、うまくいかず部長や他の課長が何か言ってくると部下に命じて改めさせる。課員の名前を出し「彼(ないし彼女)が大丈夫と言ったので」と弁解する。

 いずれも上司として確たる考えがなく、上の人や周囲の反応を見ながら動く点は同じであり結局は部下が後始末を強いられる。

 だが部下から見ると「駄目」であっても上司は上司であり、何らかの評価を受けて部下を管理する立場になったのではないか。実際、上司の上司は「駄目」な上司を「優秀」と評価していることがある。

 「長いもの」すなわち上の言うことをよく聞くわけだから上からすると評価したくなる。しかもあまり失敗をしないからさらに評価したくなる。「放置する」は「挑戦しない」「無理をしない」とほぼ同義なので失敗しない。「放置する」ことで問題が起きても上から言われた通りにすぐ改めるからさほどの失敗には見えない。「素早く対処した」という評価につながることすらある。

中間管理職とは何をする人か

 「かつて高度成長期に日本企業の強みと言われた中間管理職の力がいまや弱まってしまった」

 上海、台北、ロサンゼルス、東京に拠点を持つビジネスコンサルティング会社、インターブリッジグループ(ibg)の好川一代表は各国のマネジャーや中間管理職を比較してこう指摘する。

 「組織はフラットにせよ、プレイングマネジャーであるべき、などと言っているうちに、中間管理職はそもそもどのような役割でどう行動すべきなのか、といったことへの共通認識がなくなり、そのまま今日に至っているのではないか」

 上司すなわち中間管理職の役割を好川氏は次のように定義する。

 「組織の考えや方針を部下に説明し、賛同させ、同じ方向へ進ませる。その際、部下一人ひとりのスキルや知識、経験、さらに創造性や柔軟性などの特性をよく見て、部下の力を引き出す」

 部下の日々の行動と労働時間、自部門の損益だけきっちり管理しても、ばらばらの方向へ動いていたら意味がない。同じ方向と言っても「問答無用、従え」と強制するわけではない。

 「組織の内外にいろいろな人がいるから意見や考え方、信条の対立などコンフリクト(あつれき)はあって当たり前。互いの疑問や信念をぶつけ合い、それを組織の活力にしつつ、決めた方向に進ませる。それがマネジャーの役割。コンフリクトがない組織は成果も出ない」(好川氏)。

 長いものに巻かれるとコンフリクトを見かけ上、無くせる。放置すればコンフリクトを先送りできる。このため、失敗せず、もめ事を起こさない管理職を優秀としてきた日本企業が多いのではないか。大過なく組織が動いているように見えても実際には大過ありである。

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