「世界はあちらこちらでむちゃくちゃな状況になっている。どれもこれも日本に大きく影響することばかりだが、日本人の大半は関心を持たない。日本は日本人が考える以上の速度で沈み始めている。にもかかわらず、メディアは日本の将来より芸能プロダクションの先行きのほうが気になるらしい。アメリカは自分が沈み出したことに気付き、なりふり構わず一番のポジションを守ろうとしているが、日本は『アメリカは不滅』というComfort Zoneに閉じ籠ったまま」

 2019年7月28日の朝、こんな書き出しの電子メールが知り合いから届いた。同年7月18日に公開した拙文「これだけ危なくなってもあなたの勤務先が変わらない理由」を読み、変わらない日本について何か言いたくなったらしい。

 メールを送ってきた知り合いはインターブリッジグループ(ibg)というコンサルティング会社の好川一代表である。好川氏は日本人だが米国や中国で仕事をした期間が長い。ibgは日本企業だが中国や台湾、米国に拠点がある。このうち中国では大学や大学院を卒業または卒業予定の学生をインターンとして採用し、一人前のコンサルタントに育てている。

 「諸国や日本の状況はそれほど悪いのか」と思ったが、世界各地で仕事をしている好川氏に向かって日本でだけ仕事をしてきたこちらから聞きにくい。少なくとも自分は芸能プロダクションの先行きに関心を持たないが、それを言っても仕方がない。ところでComfort Zoneとは何だろう。

居心地のいい場所から出られない

 ご丁寧に好川氏はComfort Zoneの説明とそこから抜け出す方法を書いた計2枚の資料をメールに添付してくれた。説明図を見ると、Comfort Zoneは小さい丸で描かれ「安全・安心だ」「居心地がいい」という文字が入っている。居心地がいいならその状態が続くことを望むから何かを変えようとは思わない。

 だが、Comfort Zoneを出たい人、出るべき人がいる。何か新しいことをしたい、もっとよい仕事をしたい、と考えている人にとって「何も変えない組織」は「安全・安心」かもしれないが「居心地がいい」とは言えない。何も変えない顧客や上司から無理難題を常時押し付けられている人は心身に危険が及びかねない。

 図にはComfort Zoneを包含する円が描かれていた。その円はFear Zoneと名付けられ、「自信がない」「言い訳を探す」「他者の意見に左右される」と付記されていた。顧客や上司に進言したとしても、変えることを怖がる相手だと「時期尚早」「予算がない」「社長の意見を聞いてから」などと言われてしまう。

 いや、顧客や上司のせいにしてよいのか。図をにらんでいると、居心地がいい場所をあえて出て何かを変えようとしても腰砕けになってしまう、と読めてきた。本稿の題名を『「居心地がいいから変えたくない顧客や上司」を変えられるか』としたが「居心地がいいから変えたくない自分を変えられるか」とすべきだったかもしれない。

 Comfort ZoneとFear Zoneをさらに囲む円が2つ描かれていた。3番目に大きい円はLearning Zone、一番大きな4番目の円はGrowth Zoneである。学びのゾーンには「チャレンジする」「問題に対応する」「新たなスキルを獲得する」、成長のゾーンには「目的を見つける」「夢を追いかける」「新たなゴールを設定する」といった文字がそれぞれ書かれていた。

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