「メジャメント(業績評価)はどうでもいい」。2019年6月5日、日本IBMの山口明夫社長は記者会見で筆者の質問にこう答えた。

 この発言は回答の一部であり、山口社長の真意を知るには前後の言葉も紹介しなければならない。

 5月1日付で社長に就任した山口氏にとって、6月5日の会見は報道関係者の前で社長として話をする初の機会。自己紹介に続いて日本IBMグループのビジョンを説明した。5月に発表したビジョンは次の通りである。

 「最先端のテクノロジーと創造性をもって、お客様とともに、仲間とともに、社会とともに、あらゆる枠を超えて、より良い未来づくりに取り組む企業グループ」

 ビジョンを読み上げた山口社長は「あらゆる枠を超えて、これが一番言いたいこと」と強調した。

 「IBMの中で個別最適になっていたところがあった。枠を超えることで今まで以上にお客様に貢献できる。こう確信しており、みんなに伝えている。社員からの反響は多い。枠を超えて、何かが変わるし、変えたい」

 説明後の質疑応答においても山口社長は「変わらないといけない」と繰り返した。「日本IBMは顧客からの信頼を失っていないか」という質問への回答を紹介する。

 「一番は人。人が変わらないとお客様に価値を提供できないし存続もできない。変わる勇気が必要。変えなくてもよいところもあり、変わらない勇気も必要。間違いなくグループ社員は同じ思いで、変わるところ変わらないところを分かって行動できる。これまでお客様に対応できなかったところがあったのは事実だが、我々が変わることで信頼関係を強固にしていきたい」

枠を超える人材をどう増やすか

 意気込みは伝わってきたが、人が変わり枠を超えることは難しい。「枠を超えるためにどういう人が求められるのか」と筆者が質問したところ、山口社長はメジャメントの話を始めた。

 「メジャメントがあり四半期ごとにチェックしている。カルチャを変えるためにはビジネス目標の達成以外に他への貢献が大事であり、それもメジャメントに入れた。数字に表れていないとしても他への貢献があれば評価する。自分の目標だけを達成しても駄目だ」

 メモを取りながら次の質問を考えた。メジャメントを変えて行動が変わるなら苦労しないでしょう、と嫌味を言おう。ところが山口社長の回答は続き、冒頭の発言が出た。

 「管理上はそういうことだが、メジャメントはどうでもいい。日本IBMについて言えば、みんなもっと貢献したいと思っている。ただ、今まで見えない壁を感じていた。もちろん数字は達成しないといけないが、IBMがもっと役に立つ、それが大事。就任して1カ月だが、みんなのやる気と手ごたえを感じている」

 先に言われてしまったので追加の質問はしなかった。行動を変える気になっている、だからメジャメントも変えて新たな行動を評価する。メジャメントが変わったからそれに合うように行動を変える、というのは話が逆だ。

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