「デジタル時代である。デジタルメディア戦略を考えてくれ」

 「デジタル時代とかデジタルメディアって何ですか。定義を教えてください」

 「何を『デジタル』または『デジタルメディア』と判断するかに関して一定のコンセンサスはあるものの、それを厳密に定義することは適切ではない。あるデジタルメディアは高度に複雑な別のメディアに組み込まれる場合もあり、どこまでがデジタルかを厳密に区別して議論することも有意義ではない」

 「……」

 上記は架空のやり取りであり、筆者が勤務している日経BP社で開かれた会議の様子ではない。とはいえ長年、紙の雑誌の編集部にいたのでインターネットがこれだけ使われるようになると雑誌やWebサイトは今後どうなるのかとしばしば考える。

 筆者の場合、「デジタル」と聞くとコンピューターの利用を、「デジタルメディア」と聞くとコンピューターで利用できるデータを収めた各種のディスクやメモリーを、それぞれ思い浮かべてしまう。

 雑誌社や出版社で働いている自覚は当然あるが「メディアのお仕事ですか」と言われるとピンと来ない。

 あと1年ちょっとで60歳になるせいか、頭が硬くなってきたらしく、人と話をしたり何かを読んだりすると言葉の定義が気にかかる。本欄で以前書いたことだが、例えば「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が出てくるとどうしても引っかかる。

 「定義は何ですか」と繰り返しているだけでは話が進まない、それは分かる。だからといって曖昧なままで議論を進めても実のある成果は得られないのではないか。

AI戦略案を眺めてみた

 これも何度か書いたことだが「AI(人工知能)」という言葉の扱いも厄介である。デジタルメディアやデジタルトランスフォーメーションと同様、何かを言っているわけだが、筆者にはよく分からない。

 必要があって内閣府の統合イノベーション戦略推進会議のWebページに公開されている「AI戦略(有識者提案)及び人間中心のAI社会原則(案)について」と「『AI戦略 2019』(有識者提案)」、そして「人間中心のAI社会原則(案)」を眺めた。

 同推進会議の説明をWebページから転記しておく。

 「イノベーションに関連が深い司令塔会議である総合科学技術・イノベーション会議、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、知的財産戦略本部、健康・医療戦略推進本部、宇宙開発戦略本部及び総合海洋政策本部並びに地理空間情報活用推進会議について、横断的かつ実質的な調整を図るとともに、同戦略を推進するため、内閣に統合イノベーション戦略推進会議を設置する」

 これを読むと「屋上屋を架す」という言葉が思い浮かぶが「横断的かつ実質的な調整」が図られるなら結構なことである。

 「AI戦略 2019」を読もうと思ったのは「AI人材を年間25万人育成する戦略案」を政府が公表したという記事に接し、原案を確認したかったからだ。相当な分量があり、いろいろなことが書いてある。

 25万人育成の話はごく一部で「全国民をAI人材にする」という構想も盛り込まれていた。これについては別のところに書いたので繰り返さない。

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