苦労することが目に見えている失敗プロジェクト、いや、玉砕プロジェクトに入れと上司から命じられたらどうするか。命令はされなかったとしても同僚や後輩が困っているのを見たらどうしたらよいだろうか。

 プロジェクトの成功に向けて予め手を打っておき、完遂することが一番大事だが本稿では触れない。失敗プロジェクトの立て直し策も論じない。失敗案件にどう関わったらよいのか、その点を考えてみる。

 最初にお断りしておくが本稿の内容は明るくない。新年度が始まる4月に暗い文章を公開するのはどうかと思ったので所々に明るく楽しい話題を挿入してみた。例えば題名にある「ざっけんじゃねーぞー」は歌の一節なのだが、音楽を持ち出したのは上記の理由からである。

受注に反対した案件の立て直しを命じられる

 まず実例を紹介する。かなり前の話だが今でも似た事態があちこちで起きていると思う。

 「プロジェクトマネジャーとして現場に入り、トラブルを収拾してもらいたい」

 知り合いのSE(システムズエンジニア)は上長からこう打診され、大いに悩んだ。ある顧客の基幹システム開発が難航し、本稼働の目処が立たない。同僚や後輩が現場で苦しんでおり、何とかしたいと思う半面、引き受けると地方都市に単身赴任しなければならない。

 プロジェクトの先行きは全く見通せず、立て直せるかどうか定かではない。収拾できたとしても五体満足で帰って来られるかどうか分からない。というのも受注の時から失敗すると懸念されていたプロジェクトだったからだ。

 受注前の会議で彼は「そんな条件で請け負ったら失敗する。受注してはならない」と強く反対したが進言は受け入れられなかった。にもかかわらず、プロジェクトを何とかしろと言われたわけで彼が悩むのは当然だった。

 結局、彼は後始末を引き受け、ある地方都市に飛んだ。顧客の担当者、現場にいる同僚や後輩のSE、協力会社のSE、いずれも疲れ、苛立っており、現場の雰囲気は険悪だった。

 プロジェクトは一体どういう状況にあるのか。何がどこまで出来上がっているのか、いや、いないのか。どうすればプロジェクトを前に進められるのか。膨れ上がったコストを誰がどう負担するのか。なかなか見極められない。

考えすぎて眠れなくなった

 土曜日曜の休みはほぼ返上、毎晩深夜まで現場で打ち合わせを重ね、収拾策をひたすら考えているうちに彼は眠れなくなった。横になっても頭で考え続けているせいか1時間ほどで目が覚めてしまう。

 こうなると酒の力を借りるしかない。仕事が一段落するのは夜の12時過ぎ、それから飲み始める。相手はプロジェクトの関係者であり飲み会というより会議の続きに近い。深夜2時ごろビジネスホテルに入って横になるが翌朝の定刻から会議を再開する。そういう毎日を続けた。

 彼は追加コストの投入を含む打開策をまとめ上げ、顧客そして自社の経営陣に談判して了解を取り付け、必要な手を打ち、現場のSEを叱咤激励し、予定よりかなり遅れたものの情報システムを稼働させた。

 プロジェクトの現場から生還できたものの彼は体を壊した。体ではなく心を痛めた同僚のSEもいた。だが、彼らを含む現場で奮闘したSEに対する会社の評価は「開発に失敗して大赤字を作った」というものだった。

 幸い、そのSEは体を治し、今は元気に仕事をしている。愚痴はほとんど言わない人だが次のようにつぶやいたことがあった。

 「振り返ると当時の自分は要領が悪かった。できないと分かっていた案件を強引に受注した営業、失敗だと気付いて現場からすぐに離脱した管理職、皆さん出世した。会社というところはうまく立ち回らないと駄目ですね」

応援歌を聴くより劇薬を服用へ

 この話を当初聞いた時も思い出して書いている今も何とも言えない気分になる。素晴らしい音楽を聴いてすっきりしたいところだ。

 いささか唐突だが音楽と言えばBABYMETALである。「記者の眼」欄で昨年引き合いに出した、「心折られても立ち向かってゆこうぜ」と力強く歌われる『KARATE』という曲はどうだろうか。

 ちょっとそぐわない。心が折れたらすぐには立てないのが人間である。「悲しくなって立ち上がれなくなっても」「走れ」と凛々しい歌声で叱咤激励されても立ち上がれないのだから走れない。

 心が折れたか折れそうな時には応援歌を聴くより劇薬を服用したほうがよいのではないか。となるとBABYMETALよりBLACK BABYMETALである。BABYMETALは通常3人組だがライブコンサートの途中で魔が差すと2人組のBLACK BABYMETALに変身する。

 細かいことを書くと「BLACK BABYMETALに変身します」と紙芝居による告知があってから登場する場合と、いきなり2人組で登場する場合とがあり、後者をBLACK BABYMETALと呼んでいいのかどうかよく分からない。ファンの間では2人組すなわちBLACK BABYMETALなのでその定義を踏襲して話を進める。

 心折られた時には「きらいだー、自分のことしか考えないやつ、かっこわりーちょーかっこわりーから近づいてくんな」とBLACK BABYMETALが明るく歌う『Sis.Anger』を聴くとよいと思う。

 本稿の題名に付けた「ざっけんじゃねーぞー」は『Sis.Anger』の歌詞の一節である。10代の美少女2人が可愛らしくこう歌うのを聴くと、2019年に結成50周年を迎える頭脳警察の『ふざけるんじゃねえよ』がなぜか頭の中に流れてくる。

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