自分の会社は売り物になるのかどうか。売るつもりがある経営者は大いに気にする。売るつもりがなくても自社の価値がどの程度か、経営者であれば当然関心を持つ。

 勤務先が売り物になるのかどうか、社員も心配である。M&A(企業の合併・買収)は経営手段の1つであり、経営者がその手段を使う可能性はある。そうなった場合、好条件で買ってもらいたいと思う。

増える「IT企業のM&A」

 IT企業のM&Aは増えている。リーマンショックの後、日本国内のM&Aの件数はいったん減ったものの、その後は回復、IT企業のM&A件数も増加している。M&A支援を手掛けるレコフによると、2008年以降の事業承継M&A件数の中で、ソフト・情報業界の案件数はレコフデータ分類の40業種中、最も多い(「2019年1月の事業承継M&Aマーケット概況」より)。

 レコフは事業継承M&Aを「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件」と定義する。「ソフト・情報業界」の件数は全件数の3割近くに達しているという。

 IT産業はまだ若いとはいえ、60年ほどの歴史を持ち、企業数は増え、社歴が長いIT企業もある。後継者が見当たらず、他の産業界と同様にM&Aを検討する例も少なくない。

 事業の効率化に加え、事業創出においてもITが重要だと再認識されたこともM&A件数増加の一因であろう。いわゆるユーザー企業がエンジニアを確保しようとIT企業を買収する場合もある。

 IT企業の種類も多い。従来からあるソフトウエア開発やパッケージ販売を手掛ける企業に加え、インターネット、クラウド、機械学習、セキュリティーなどに狙いを絞った新興企業が登場している。上場した新興企業が上場前の新興企業を買う動きもある。

 IT企業のM&AはIT産業の先行きに対応した動きでもある。新しい開発手法やIT利用の術を身に付けた技術者をM&Aで獲得する。ユーザー企業に買ってもらい発注者の近くで開発に取り組む。

 ソフトウエア開発の需要は引き続きあるものの、伸びるのは事業創出に伴うITの仕組みを整備する領域である。企業の事務処理用ソフトウエアの開発を大手IT企業が請け負い、実際の開発を中小のIT企業に任せるといった従来型の事業が今後も伸び続けるとは言い難い。

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