「働き方改革ほどうんざりするものは無い。あの言葉を聞くと吐き気を催す」

 ある中堅企業の役員にこう言われた。理由は次のようなことだ。商売は苦しく現場は頑張っているがとにかく人手が足りない。ところが管理部門は時短をしろ、休日出勤など論外、と迫ってくる。定時退社などしている場合か、と怒鳴りたくなるが我慢している。社長が「働き方改革をしないと社員を採れない」と管理部門の側に立っているからだ。

 シンギュラリティという言葉を見ると筆者は不愉快になるが働き方改革と聞いてもそうはならない。ただ、その役員の腹立ちは理解できた。締め切りが翌日に迫っているのに「定時で仕事を止めろ」と命令されても従えない。締め切り日はあらかじめ分かっているのだから間に合うように書いておけ、と言われても書けないときは書けない。

 どうすればよいのか少し考えてみた。そうだ、2倍稼いで定時に帰ればよい。今度あの役員に会う機会があったら伝えよう。

思い切った目標を立てよう

 2倍の対象は売り上げでも利益でも生産性でも何でもよいが、ただでさえ仕事がたくさんあり、しかも人手が足りず定時退社どころではないのに2倍稼げとはどういうことか。

 この4月から「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(通称働き方改革関連法)」が施行され、働き方改革をさらに進めなければならない。単なる時短では事業が縮んでいくから生産性を高める必要があるものの、日本の企業や団体の生産性が低いと言われて久しい。よほど思い切った目標を立てて取り組まないといけない。だから2倍というわけである。

 乱暴な話をしているようだが2倍という数字には一応の根拠がある。企業の活性化を支援する一般社団法人アドバンスト・ビジネス創造協会(ABC協会)の細川泰秀副会長は「企業が2倍稼いで2倍税金を納めれば国債残高の増加を抑えられる」と試算した。

 これ以上、法人税を納めるのかと反発する向きもあろうが税収を増やさないと社会保障を維持できない。しっかり儲ければ前向きな投資もできるし給与も上げられるはずだ。

やるべきことはもう分かっている

 生産性は得られた成果を投入した資源で割って求める。同じ仕事を半分の時間あるいは半分の人員でこなせば生産性は2倍になる。そのためには業務プロセスの標準化や組み替え、無駄な作業の打ち切りといった以前より指摘されてきたがなかなかできなかったことを断行しなければならない。

 半分の時間ないし半分の人員で同じ仕事をすると売り上げが半分になってしまう産業がある。それでは生産性が2倍にならないから発注者と交渉する。半分の時間でやってのけたら本来、特急料金をもらいたいくらいである。

 高品質の維持は日本企業の強みであったが過剰品質になっては国際競争力を落とす。2倍儲けるにはどこかで割り切らないといけない。

 生産性を計算する際の分母、価値を2倍にすることにも挑戦する。顧客が「それなら2倍払う」という価値を提供できないか。IoTやAI、DXなど流行語で表現される技術や取り組みは価値向上のために使い、実施したい。

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