いつも明るく笑顔を絶やさない人も心の中に闇を抱えている。裏表があるという意味ではない。人は本来そういうものである。

 そう実感した人と話をした際、「ダーク」と言っていたので「闇」と書いてみた。その人は「呪い」という言い方もしていた。闇とか呪いとか何事かと思わせるが要するに悩みやひっかかりのことでそれは誰の心の中にもある。

 失敗した経験やそれに伴う後悔、傷付けられる発言、親の何気ない一言など闇の原因は様々であり、体験した時期は幼少の頃だったりする。このため心の中に闇があることを周囲はもちろん本人も案外知らない。

 それでも人生や仕事において大きな決断を下したり長年の同志と別れたり、そういう一大事に直面して沈思黙考したとき、闇や呪いに気付くことがある。光を当てて闇を解消できればよいがそれは難しい。闇を認め、抱えたまま前に進むことになるがそれも簡単ではない。

 今回紹介する人は10年以上も苦楽を共にしてきた3人組から2018年、独立した。けんか別れではなく3人同士さらに関係者とよくよく話したうえでそう決めた。長年いたチームから離れる過程でその人は「ダークな心の旅」に出た。当人に会って話を聞く機会があったので報告する。

16年前に紹介したNPOのその後

 「10年以上続いた『3人組』の1人はダークな旅を経て独立した」という本稿の題名にある3人組は「かものはしプロジェクト」というNPO(非営利団体)の創業者3人を、「ダークな旅を経て独立した1人」はカンボジアにあるNPO「SALASUSU」の青木健太代表をそれぞれ指す。

 青木代表はかものはしプロジェクトを始めた3人組の1人であったが2018年4月から独立し、SALASUSUの代表になった。独立の経緯を「1社目を起業した3人組を去った1人が、心折れずに30代で起業する方法」と題して青木氏自らインターネット上に書いているので読んでいただければと思う。

 青木氏を含む3人組に筆者が初めて会ったのは2003年、もう16年も前だ。3人組の話を聞いて「カンボジアの児童買春とITで闘う」と題した一文を本サイトの前身であるITproに書いた。検索いただければ今でも一応読める。これはインターネット利用の素晴らしいところである。

 2003年に書いたものを読み直すと3人組に会った経緯を次のように書いていた。

 「かものはしプロジェクトのメンバーに会ったきっかけは筆者の同僚の紹介であった。プロジェクトのメンバーが筆者の同僚に『IT業界に詳しい人に会いたい』と相談したそうである。同僚によく聞くと、プロジェクトのリスクを除去するために専門家の意見を聞きたいとのことであった」

 こう書いてから数年後に分かったことだが同僚の説明は真っ赤とまでは言わないがほとんど嘘であった。事実は次の通りである。

 かものはしプロジェクトメンバーの知り合いの方が同僚に対し「かものはしのことを多くの人に知ってほしいので記事を書いてほしい」と頼んだ。同僚は谷島に書かせるのがよいと考えた。とはいえ「紹介記事を書いてほしい」と頼むとへそ曲がりの谷島は恐らく会わないし書かない。「意見を聞きたい」と頼めば会ってくれ、興味を持ったら勝手に書くのではないか。

 同僚の予想通り、積極的に記事を書いてしまった。この同僚は後輩であったが先輩への敬意が無いうえに目的を達成するために手段を選ばないなど記者にしておくには惜しい人材で実際彼は記者を辞めて起業した。

 2003年の拙文で、かものはしプロジェクトの事業案を紹介しつつ、読者へ助言を求めた。日本とカンボジアでシステム開発を請け負って金を稼ぎ、住み込みができる職業訓練の場をカンボジアに用意し、児童買春に遭う危険がある子どもを保護、職業訓練する。これが当初の事業案であった。

 呼びかけに応じ、かなりの数の読者が真摯な意見を書き込んでくださったが読者コメント欄を無くしてしまったため投稿を今読むことはできない。これはインターネット利用の残念なところである。申し訳ない。

 「熱意と善意は疑わないがこの事業案が持続可能とは思えない」という意見が少なからずあったと記憶している。システム開発で利益を出すこと自体、簡単ではなく、子どもたちを救う前に行き詰まってしまうのではないかという懸念からだ。

 記事を書いてしばらくして3人組と晩ご飯を食べたことが一度あった。システム開発の仕事で睡眠不足が続いていた青木氏は会食中に眠り込んでしまった。その様子は今でも覚えている。

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