欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージを使って基幹系システムを構築している約2000社のユーザー企業が憂鬱な事態に直面している。あと7年のうちに必ず基幹系システムを刷新しなければいけないからだ。それまでに、ユーザー企業は新製品である「S/4HANA」に移行するか、SAP製品の利用を止めて基幹系システムを再構築するか、決断しなければならない。SAPユーザーが今、何を考え、今後どうするべきか。関係者への取材を基に徹底検証する。

 欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージユーザーが「2025年問題」に直面している。ERP製品「R/3」から名称を変更した「SAP ERP」と、ERPにSCM(サプライチェーン管理)やCRM(顧客関係管理)を加えた「SAP Business Suite」の標準サポートが2025年に終了するからだ(以下、SAP Business Suiteを含めてSAP ERPとする)。

 SAP ERPのユーザー企業はあと7年の間に、SAP ERPの後継製品「S/4HANA(エスフォーハナ)」に移行するか、別の手段を取るかを決断しなければならないという憂鬱(ゆううつ)な事態に直面している。

SAPユーザーが現在、直面している5つの憂鬱
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「サポート切れ」で経営層を説得するのは困難

 2025年問題に悩む1社が、火災報知器などの防災製品を開発・販売するホーチキだ。同社は2012年4月、メインフレームで稼働していた基幹系システムをSAP ERPで刷新。会計や販売、購買、生産管理などの機能を活用している。

 「基幹システムの寿命は15年と考えている。2025年以降もこのままSAPを使い続けるつもりだ」。ホーチキの佐藤菜穂子 情報システム部長はこう話す。この前提で、同社はS/4HANAへの移行に向けた検討を進めている。まずはMRP(資材所要量計算)の高速化や新たなデータ分析機能など、S/4HANAの機能が経営に与える影響を検証中だ。S/4HANAを利用する経営上のメリットを主張できるようにすることを狙う。

 「社内はSAP ERPを使った基幹系システムに満足している。『製品のサポートが切れる』という理由だけで、問題なく動いている基幹系システムの刷新を経営層に打診するのは難しい」と佐藤部長は話す。

 S/4HANAへの移行時期も悩みどころだ。2025年まではまだ7年あり、同社のシステムはSAPが提供するマネージドのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「SAP HANA Enterprise Cloud(HEC)」上で稼働しており、ハードウエアのリプレース時期を考慮する必要はない。

 一方で「付き合いのあるSAP ERPのパートナーから、SAPの導入を支援できるコンサルタントが不足する可能性が高いと言われている」(佐藤部長)。2025年が近づくにつれて、同社の望むタイミングでS/4HANAへ移行するのがより困難になる恐れがある。

 「基幹系システムである以上、スキルの高いSAPのコンサルタントにプロジェクトを依頼したい。それが困難なら、移行時期が2025年を越してしまうことも視野に入れる必要が出てくるかもしれない」と佐藤部長は懸念する。

2000社が7年間で一斉に基幹系を見直す

 SAPジャパンは公式にSAP ERPの導入社数を公表していないが、日本国内に2000社程度あるとみられる。グローバル展開する大企業から中堅中小企業まで幅広く導入しており、製造業や商社を中心に業種業態も多種多様だ。

 ホーチキをはじめ、これらの企業が一斉に2025年問題に直面している。10年、20年と利用することが珍しくない基幹系システムで、数千社もの企業が一斉にシステムを見直すのは先例のない事態だと言える。

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