コンセプトは「ほんのちょっとの防犯」

 「元は、工事現場のパイロンのようなものを想定していた」と渡部氏。試作品は、製品に比べると縦に長く、全体が光るようになっていてカッコいい。

 「中に単4電池を入れる予定だったので、縦長のデザインを考えていたが、安定が悪く、紆余曲折を経て今の形になった。本当は乾電池式にしてコストを下げたかったが難しく、他の小さな電池ではアラームを鳴らすのに電力量が足りないこともあり、現在のリチウム電池に落ち着いた」(渡部氏)。コスト的には少し高くなったが、「最初に自分が欲しいと思っていた製品に仕上がって満足している」と渡部氏は笑う。

 「日本だから成立する製品だと思う。米国だったら、こんなの防犯にならないって言われるだろうから」と、キングジム広報室の稲葉大力氏。その通りだろう。しかし、日本ではこの「ほんのちょっとの防犯」が、それなりに機能する。そして、使う側の「あまり大げさなことはしたくない」という感覚とも合うのだ。

 筆者もトレネを使うときは少し照れてしまう。「もしアラームが鳴ったら嫌だなあ」と考えてしまう。トレネくらい、さりげなさを重視して作られていても、使う側としては照れるのだ。つまり、カフェなどでの置き引き防止製品としてはこのくらいが、日常的に使うギリギリのラインなのだと思う。そう考えるとトレネはよくできている。

 実は、トレネはそーっと動かすとアラームが鳴らないこともある。しかし、カフェなどで、誰かがトレネをそーっと動かしていたら、それだけでアラームより目立つ。つまり、トレネを置いておく意味は十分あるのだ。

 「ユーザーは、ノマドワーカーが多く、使用シーンもカフェや空港のラウンジといった場所が多いようだ。最初はクラウドファンディングに出し、予想以上の反応があった。ちょっとした安心が得られる製品の需要はあるのだということが分かったのもうれしいことだった」と渡部氏。実際に使うと、ちょっと照れるが、確かに安心できるのだ。

出典:日経トレンディネット、2018年8月2日
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