紙媒体コンテンツの新たな流通経路に

 コンビニのマルチコピー機を使ったコンテンツサービスは、ビジネスの観点でも面白い存在だ。従来の紙媒体によるコンテンツ提供では、印刷や製本といった製造コスト、物流、在庫管理、廃棄といった流通コストがどうしてもかかる。コンビニのマルチコピー機をコンテンツの販路に使うと、こうしたコストを削減できる。

 まず、少ない部数を広い地域で売るビジネスが可能だ。地方競馬の専門紙のように、地域外では大きな売り上げを見込みにくいコンテンツであっても、全国で販売できるのは、コンビニのマルチコピー機の威力といえるだろう。ブロマイドでも同じことがいえる。シャープマーケティングジャパンの黒木部長は「メジャーになりきる前のアイドルやアーティスト、万人受けはしないが熱心なファンを持つアニメ作品などに向く販路になる」とアピールする。

 また、在庫管理に悩む必要がない。在庫リスクを避けられるだけでなく「在庫の補充が不要で、ヒットした場合はどこまでも売れ続ける」(シャープマーケティングジャパンの黒木部長)というメリットもある。実際、AKB48グループやブラウザゲーム「刀剣乱舞」やスマホゲーム「A3!」、歌い手ユニット「すとろべりーぷりんす」など、ブロマイドやポスターが大ヒットしたコンテンツがあるという。

 セブン-イレブンの富士ゼロックス製コピー機では、アップロードしたファイルごとに出力用のコードが発行される。これを利用して、マルチコピー機を同人作品の配布に利用するユーザーもいる。

セブン-イレブンのマルチコピー機でコンテンツを出力するコードの例
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 コンテンツという言い方は正しくないかもしれないが、様々な証明書も発行できる。例えば、自治体が対応していれば住民票や戸籍謄本などを出力できる。

 意外なところでは、一部の大学の卒業証明書や成績証明書の発行が可能だ。2016年に近畿大学が開始したのを皮切りに、京都産業大学や中央大学などがコンビニ出力を開始。2019年には、京都大学が国立大学で初めてこのサービスを開始している。就職活動や転職活動で証明書が必要になった際、全国どこでもコンビニに行けば出力できる。

 コンビニのマルチコピー機では、コンテンツサービスの拡充が年々進んでいる。この先、さらに楽しく便利なコンテンツが登場しそうだ。筆者は実際に体験してみて、コンビニに鎮座するあの機械を単なる「コピー機」と呼ぶのに、いささかの抵抗を覚えるようになった。今はまだ知る人ぞ知る、という感じだが、一度触れてみてはいかがだろうか。

稲垣 宗彦(いながき むねひこ)
スタジオベントスタッフ
高校在学中から、電波新聞社の「月刊マイコン」「マイコンBASICマガジン」でゲームレビューやイベントリポートを中心に執筆し、ライターとしての活動を開始。趣味のゲームを仕事にしてしまったことを後悔し始めた頃に、中学校時代まで熱中していた釣りを再開。近年はアウトドア関連の他、財布やバッグといった小物の記事なども手掛けている。