VR(仮想現実)の世界に迷い込み、巨人や小人(こびと)たちとダンスする──。筆者は令和元年初日の5月1日、世界各地で喝采を浴び日本初公開を迎えたVR作品「VR_I」を体験した。仕掛け人はスイスを拠点に活躍する振付家でダンサーでもあるジル・ジョバン氏。その模様をお伝えする。

 向かった場所は、東京・青山にあるスパイラルガーデン。演目はコンテンポラリーダンスとなっているので、仮想世界でそれを踊るのかもしれない。ただし筆者はコンテンポラリーダンスがどんなものかよく知らない。

 筆者は鑑賞者となるだけでなく、仮想世界で踊る。自分自身がVR作品の一部になる仕掛けだ。

 ダンス経験がゼロの筆者でも楽しめるのか。期待と不安を感じながら待っていると、事前に詳しい説明が何もないまま順番が来た。筆者を含む、偶然居合わせた参加者が5人1組で中央の四角いスペースに導かれ、VRの装備を整える。

VR_Iを体験するため、参加者が装備する機器一式。VRを見るゴーグル、ヘッドホン、背負うパソコン、両手両足に着けるセンサーで構成されている
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 まず両方の手のひらと両足の先に、センサー付きの器具を着けた。さらに、ランドセルのような大きな箱形の機械を背負う。これが結構重い。それもそのはず、実はこれパソコンなのだ。

 最後にVR用のゴーグルとヘッドセットを装着し、準備完了。既にVRのシステムが起動しており、何やら黒っぽい岩肌が見える。どうやら筆者は仮想世界では洞窟のような場所にいるようだ。

 参加者5人の装備が済むと、洞窟の中に5人全員のアバター(仮想世界での分身)が現れた。性別や体形、身なりはバラバラ。そのうちの1人は筆者である。5人は同時にアバターとして、同じ仮想世界に放り込まれたわけだ。

 各自のアバターは自分の体の動きに合わせて、同じように動く。現実世界の8メートル×5メートルの舞台には、あちこちに計16台のカメラが設置されており、参加者が着けたセンサーの動きを読み取っている。いわゆるモーションキャプチャーである。

参加者の動きを記録するモーションキャプチャーのカメラが合計16台、体験スペースの周囲に設置されていた
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 モーションキャプチャー技術を提供しているのは、スイスに拠点がある非営利団体アルタニム(Artanim)。この組織はモーションキャプチャーを専門に研究し、さまざまなプロジェクトに参画している。ジョバン氏とアルタニムが出合ったことでVR_Iは生まれた。

参加者5人が仮想世界で体験を共有

 さあ、冒険の始まりだ。あいさつ代わりに、参加者(アバター)同士でハイタッチしたところ、手に感触があった。ゴーグルを着けて仮想世界に没入したまま、物理的に参加者同士がタッチをしている。現実世界の参加者の動きが、モーションキャプチャーによって仮想世界のアバターの動きとリアルタイムに同期している。