ここは未来の歯医者さんか──。いや、違う。誰も体験したことがない「音と振動と光の感覚」を味わえる、唯一無二の空間だ。五感の拡張に興味がある筆者は早速、毎年恒例のテクノロジーアートの祭典に出向き、共感覚体験装置「Synesthesia X1-2.44」を試してきた。

Media Ambition Tokyo 2019で、共感覚体験装置「Synesthesia X1-2.44」を体験する筆者。黒い椅子は44個の振動子をつなげて作っている。椅子の脇にある丸い装置はスピーカー
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 椅子のような奇妙な黒い装置の説明は後回しにして、まずは体験者の声を拾ってみたい。「宇宙に放り出された」「神様と交信しているみたい」「死ぬときってこんな感じ?」「赤ちゃんが生まれてくる前はこんなふうなのかも」

 人それぞれ感じ方が違う。そこがまず面白い。共通するのは、未知の領域に足を踏み入れてしまったということだろうか。

 自分が今体験したばかりのことを、すぐに言葉にできている人はまだいい方だ。実は最も多い反応は「訳が分からない」「言葉が出ない」「放心状態」「別世界」などである。

トップエンジニアが集うテクノロジーアートの祭典

 2019年で7回目を迎えた「Media Ambition Tokyo 2019(メディア・アンビション・トウキョウ 2019、MAT2019)」は2月23日から3月3日まで、都内の六本木ヒルズ/森タワー52階にある東京シティビュー(展望台)をメイン会場に開かれている。MATは、日本を代表するアートや映像、音楽などのスペシャリストが集結し、ジャンルを超えて自分たちの取り組みを実験レベルのものを中心に披露し合う場である。展示する作品は完成されたものでなくていい。そこが通常の美術館などとは大きく異なる点だ。

 共通するのはテクノロジーの採用。AI(人工知能)やVR/AR(仮想現実/拡張現実)を使ったメディアアートやデジタルアートと呼ばれる作品の展示が多い。ITを活用した作品がほとんどで、エンジニアや大学の研究者などが多数参加しているのもMATの特徴といえる。