それだけなら、何もデジタル化する必要がないように思えるかもしれない。しかし、このアンケートシステムを使えば、普段できないことまでできる。観客個人の特定だ。

1万2000人の全座席に、QRコードを割り当て

 1万2000人の全座席には、先ほど触れたWi-Fi接続のための手引きが配布されている。この紙には座席番号を示すQRコードが印字されている。つまり、1万2000席に別々のQRコードをプリントした紙を、事前に配布しているのだ。これまた手間がかかる、人海戦術による作業である。

 アンケートの特設サイトにアクセスするには必ず、スマホでQRコードを読み込む必要がある。それにより、どの座席の人がWi-Fiに接続できたかを運営側が確認できるようになっている。しかも固有の座席番号データを、アンケート結果の表示に使う。どの座席の人がどの回答を選択したのかを、会場の座席マップに色分けして個々に表示することができる。

 Perfumeがファンに向かって職業を尋ねるのも、ライブではお決まりの質問。「医者」「弁護士」と質問したとき、ボタンを押した人が会場のどこにいるかが、スクリーンを見れば分かる。普段ならPerfumeが手や声を上げた人の方を見て、「どの人?」と尋ねる。本人は大声で叫ぶなり、手を振るなりしないといけない。それがアンケートシステムを使えば、座席を特定できてしまう。スクリーンを見ると、「あの辺に医者がいっぱいいるよ。なんで?」みたいなやりとりができる。

Perfumeのライブでは定番になっている観客の職業を尋ねるコーナー。通常は該当者に手を上げてもらったりするが、アンケートシステムを使えば「医者」「弁護士」と回答した人がどの座席にいるかが瞬時に分かる
(出所:NTTドコモ)
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 アンケートシステムは何も、観客に質問に答えてもらうだけのものではない。ファンがスマホからメッセージを書き込み、Perfumeに送れるのだ。写真がないのでイメージしにくいかもしれないが、ファン個人の座席を特定できているので、スマホから書き込んだメッセージは、スクリーンに映る会場マップの各座席からニョキニョキと生えてくるように表示された。あちこちの座席からメッセージが生えてくる様子を見ているだけでも面白い。

 しかもファンクラブ会員のデータベースと購入したチケットの座席番号は、システム上でひもづいている。そのため、ファンが登録しているニックネームをメッセージに添えて表示することまでできてしまう。これは観客をファンクラブ会員に限定しているからやれることの1つだ。もちろん、個人を特定できても、会員情報の利用はニックネームなどに限定して匿名性を保つ。

 最後に、アンケートシステムを使った最大のお楽しみが披露された。ステージにいるPerfumeから、ファンのスマホに直接メッセージを送るのだ。

 ステージ上にある端末にPerfumeがペン入力する手書き文字が、ファンのスマホに書いたそばからどんどん表示されてくる。メンバーの1人であるあーちゃんがいつもの広島弁で「みえとるー??2019なったねぇ(中略)みんなでつながれるってうれしいネ♡・・・」と端末に書き込むと、ファンはその手書き文字をスマホで受け取り大興奮。ライブにおけるファンとアーティストの新しいコミュニケーションを成立させた。電子的とはいえ、手書きの直筆メッセージが自分のスマホに届くのはうれしいことだ。

 この間、1万2000人が持つスマホからのWi-Fi同時接続が突然途切れるようなことはなかった。NTTグループは世界最大規模のWi-Fi同時接続に、ひとまず成功したといえる。5Gを介した集計結果のスクリーン表示も、長く待たされることなくスムーズに映し出された。