Wi-Fi接続するには、スマホ側の設定が必要になる。これは観客自身にやってもらう。まずはここが高いハードルだ。実は今回のライブチケットを購入したファンクラブ会員にはあらかじめ、今回のWi-Fiシステムに対応できるスマホを持ってきてほしいと知らせていた。「スマホ持ち込み可」だった。ただし、Wi-Fiの設定はその場で自分ですることになる。

 手順がまたユニーク。ライブ中にスマホを使うのは禁止なので、Wi-Fiは「機内モード」にしておいてもらう。会場にあるスマホを一度、ネットから遮断してしまう。まさに飛行機の中にいるときと同じように、いったんネットを使えなくする。

 そのうえで、アンケートシステムを体験するときが来たら、各自がスマホを取り出して、会場専用Wi-Fiのアクセスポイントへの接続を設定する画面を開く。画面には会場専用Wi-Fi(今回はfe04となっていた)だけが表示される。そこにみんなが接続する。この手順も機内Wi-Fiの設定と要領は同じだ。

 Wi-Fiにつながったことを確認できたら、各座席に配布されたQRコードを読み込んで、特設サイトにアクセス。もし表示されなければ、画面にURLを直接打ち込む。すると自分の座席番号が表示される。これで観客側のスマホの準備はOKだ。

横浜アリーナで、スマホでPerfumeとやりとりするファン。会場専用Wi-Fiにだけ接続できるようにした
(出所:NTTドコモ)
[画像のクリックで拡大表示]

 こう書くと、簡単な手続きのように思えるかもしれない。だが相手は1万2000人もの観客だ。うまく接続できない人が当然出てくる。そこは、隣の座席の人が知らない人だったとしても、ファンがお互いに助け合いながら協力して接続する。Perfumeのファンクラブ会員という共通点がある人たちの集まりなので、サポートの輪が広がりやすい。これが自然にできるかできないかは、相当大きな違いになる。

ファンの協力なしに、1万人規模の本番利用はできない

 今回、Perfumeのライブで初めてアンケートシステムを使うことになったのは、ファンの結束が強く、協力的な人が多いからだ。「Perfumeのファンはお行儀が良い」と業界で評判になるほど、Perfumeファンは3人との交流や約束を大事にする傾向が強い。

 最たる例が、ライブツアーで歌われる曲目リストのネット書き込み。先にツアーを体験した人がリストをネット上に公開してしまうと、これからライブに行く人たちの楽しみを奪ってしまうことになる。だからライブ期間中は「ネットへの書き込みをやめてほしい」と、多くのアーティストは考えている。だが実際にはなかなか守られないのが実情だ。悪気がなくても、自分が見てきたライブの話を詳細に、ネットに書き込みたくなるファン心理は理解できる。

 それでもPerfumeファンの多くは、「書き込みをしない」という約束を大多数の人が守ろうとする。そうしたファンが多いことが結果的に、アンケートシステムを最初にここで使ってみようという判断にもつながるわけだ。

 しかも、テクノポップユニットとしてデビューしたPerfumeのファンは、新しいテクノロジーが大好き。仮に失敗しても、新しいことに挑戦していることそのものを楽しめるだけの度量の深さがある。運営サイドにとっては、非常にありがたいことだ。

 アンケートシステムを導入しても「ボタンなんて押したくない」といったひねくれたファンがいたら、1万2000人が体験を共有するというイベントは成立しなくなる。周りに困っている人がいても無視するようでは、全員参加型のイベントは実現が難しい。観客全員が助け合い、面白がって参加してくれる環境をつくり出せることが実行する大前提になる。