課題も残った光の共有イベント

 横浜アリーナにいると、30分間のスペシャルコンテンツは何事もなく終わったように思えた。だが振り返ってみると課題も明らかになった。

カウントダウン直後の最初の1曲に熱狂する1万2000人のファン。LEDライトが会場の一体感を生み出す。曲に合わせた横浜と渋谷の光の共有も、遅延がないから可能になる
(出所:NTTドコモ)
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 横浜アリーナから渋谷へのライブ映像や音声、光などの演出データの伝送自体に問題はなかった。ここだけは種明かしをすると、横浜と渋谷の間の伝送は有線の光ケーブルを使っていた。5Gの無線通信を用いたのは、横浜アリーナ内でのデータ伝送の一部と、渋谷に情報が伝わった後のサテライト会場内でのデータ伝送部分である。渋谷では、ドコモ傘下にあるタワーレコード渋谷店の地下に5Gの通信装置を配備していた。

 光の制御は5Gの通信を含めて、うまくいったといえる。だが渋谷にいた人たちが、新しいエンターテインメント体験をどれだけ楽しめたかは別問題。光の波や連鎖が美しく見えるようにするには、腕輪(PixMob)を着けた人たちの統制が取れていなければならない。横浜アリーナのように座席があるわけではなく、まして直前までPerfumeが登場することを知らされてもいなかった渋谷の人たちは、生中継の間に想定外の行動を取っても不思議ではない。とにかく動き回る。

 腕輪を渡した人はライブ中継の30分間はその場から出られないように、柵を設けて決められたエリアに「閉じ込めた」のだが、それでも言うことを聞いてくれるとは限らない。年越し前から酔っぱらっている人もいたりして、渋谷はかなりの混乱状態だったという。結果、観客がまばらになるエリアができると、途端に光の波がまだら模様になってしまう。想定していたようなきれいな光の演出にならなかった部分もあったようだ。これはテクノロジーの問題ではなく、不特定多数の人が集まる場所での演出の難しさを意味している。

 かといって、Perfumeが渋谷に映像で生出演することを事前に告知すれば、今度はPerfumeファンが渋谷に押し寄せて、すぐに定員オーバーになってしまうリスクがある。だから告知はギリギリまでしなかった。ただでさえ、大みそかから元日にかけては、渋谷のスクランブル交差点付近は大混雑する。中には暴れる人もいる。今回も警察が出動する事態に。運営面では反省が残った。

 そうした渋谷の混乱を、横浜アリーナにいたファンも筆者も、そしてPerfumeの3人も知る由がなかった。日付が2019年1月1日に替わり、カウントダウンの生中継が終わると、今度は横浜アリーナにいるファンクラブの人たち向けの特別イベントが始まった。Perfumeファンにはこれ以上ないほどのてんこ盛りな内容が、深夜2時近くまで続いた。紅白歌合戦から半日近くの時間を、Perfumeと一緒に過ごせたファンは大満足だったに違いない。

 横浜アリーナにいるファンだけが体験できた年明け後のイベントは、カウントダウンのときとはまた違うテクノロジーを使った本邦初の試みだった。もちろん、筆者も体験したことがない、ライブの新しい楽しみ方を提案する内容だったといえる。それについては、後編で紹介する。

■変更履歴
3ページ目の中段、ライゾマティクスの真鍋大度氏のコメントの一部を先方の申し出により削除しました。本文は修正済みです。 [2019/02/01 16:00]