NTTは米国時間の2018年12月7日、米ラスベガス市で会見し、人工知能(AI)を活用したスマートシティを2019年春から本格提供することで同市と合意したと発表した。街中の交差点に設置したカメラ映像などのデータを集約して分析、事故の回避や防犯に役立てる。他のIT企業と異なり、データの所有権にこだわらない姿勢が評価され、案件を勝ち取った。

ラスベガス市内の交差点に設置した映像カメラ。高さの異なる2カ所に映像カメラを設置している
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 NTTは2018年9月からラスベガス市内の交差点に計30個の高解像度カメラなどのセンサーを設置して、実証実験を進めてきた。今回、カメラから得たビッグデータを解析することで、特定の交差点において交通事故につながる逆走が多く発生していることなどを把握できた。通行するクルマのナンバープレートも読み取っており、ナンバーが付いていなくても車種を特定できる機能なども導入していく。

 ラスベガス市には複数のIT企業が提案していたが、「収集したデータの所有権はあえて主張しない」(NTTの澤田純社長)という同社の姿勢が評価された格好だ。

 ラスベガス市のマイケル・シャーウッド最高情報責任者(CIO)は、「NTT以外の大手IT企業はデータの所有権を譲らなかった」と説明する。同市は収集データをオープンデータとしてAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)などを介して市民や企業に公開し活用していく考えで、NTTの方針と合った。

ラスベガス市のシャーウッドCIO。逆走するクルマの検知などについて説明した
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ビッグデータで事故や犯罪を予測

 NTTが提案したシステムのアーキテクチャーには、デバイス側に近い環境でデータを処理するエッジ型を採用しており、イベント会場などに持ち込むことで臨時の監視拠点を作れる小型の基地局も開発済みだという。

 映像データはクルマのほか、不審者や迷子を見つけたり、急に人だかりができた場所を特定したりする用途に活用する。街中には音響センサーも設置し、銃声や悲鳴などの検出にも利用していく。こうしたセンサーデータに加えて、過去の犯罪履歴、天候、SNSなどのデータを掛け合わせて、どのような条件で事故や犯罪が起こりやすいかについても予測する。

 もちろんプライバシーには配慮しており、「ビッグデータから個人を特定できるような情報は排除している。例えば、ナンバープレートの情報などは一定期間で消去している」(シャーウッドCIO)。

 NTTは収集したビッグデータの所有権を主張しない代わりに、そこから得られた知見であるアルゴリズムなどを他のスマートシティの案件で活用していく。アルゴリズムの開発などAIや機械学習に関する部分はNTTデータグループのデータサイエンティストが担当している。

 課題はこうして見いだした予測分析に基づいて、市や警察、消防などのリソースをどう動かすかという点だ。米国では大小様々な犯罪件数に対して、警察官の数が足りていないとされる。そうした中で効果を最大化するための提案も求められるだろう。

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