オープンソースのオフィスソフトウエアである「LibreOffice」について、開発者や貢献者、利用者が一同に会する年次カンファレンス「LibreOffice Conference」が、2018年は9月25~27日にアルバニアの首都ティラナで開催された。

 LibreOfficeは、ワードプロセッサの「Writer」や表計算の「Calc」、プレゼンソフトの「Impress」、図形描画ソフトの「Draw」、データベースソフトウエアの「Base」、数式エディターの「Math」から成る、フル機能のオフィスソフトである。もともとは米サン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)がホストをしていたOpenOffice.orgを基に、特定の企業に依存しない、よりオープンな開発体制を作ることを目指して、2011年に分岐(フォーク)したプロジェクトだ。現在は非営利団体「The Document Foundation(以下TDF)」によってホストされている。

 半年に一度、必ずメジャーリリースを行うという「タイムベースリリース」ポリシーを採用して成長を続けている。WindowsやmacOS、Linux以外にも自分のWebアプリケーションにLibreOfficeの編集機能を組み込める「LibreOffice Online(LOOL)」や、限定的に編集機能を持つAndroid版の「LibreOffice Viewer」といったラインアップ展開をみせる。現在の最新バージョンは6.1。次のメジャーリリース6.2の開発が進んでいる(LibreOfficeのバージョンはX.Yで表し、1つのメジャーバージョンになる)。

 推定ユーザーは全世界で約2000万人とされる。主に、米国系企業によるベンダーロックイン(囲い込み)を嫌う欧州を中心に、政府系や自治体での採用が進んでいる。日本国内では福島県会津若松市や静岡県湖西市といった地方自治体が採用している。JA福岡市のように移行マニュアルを公開しているところもある。

都市の発展にオープンソースの力を使う

 今回、年次カンファレンスが開かれたアルバニアは東欧のバルカン半島に位置し、ギリシャ北方のアドリア海沿いにある。旧共産圏であり、「ヨーロッパ最後の秘境」と呼ばれたこともある小国だ。現在は急速に国が発展しており、首都ティラナは活気がある。美しい街という印象も受ける。

 年次カンファレンスの開会式では、Erion Veliajティラナ市長が登壇。ティラナではAI(人工知能)やVR(仮想現実)といった情報科学を若い世代と共に盛り上げていくことを目指している。オープンソースはそのためのプラットフォームとして重要だ。そのため、「LibreOffice Conferenceの招致という挑戦をした」というメッセージを市長が発した。

オープンソースを活用したティラナ市の発展について開会式で語る、Erion Veliajティラナ市長
(撮影:Mike Saunders、CC BY-SA)
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 開会式ではTDFのItalo Vignoli氏が、2017年次レポートを引用しながら、LibreOfficeの現状を説明した。1年を通して活動している開発者は300人程度で安定しており、品質向上やデザイン変更といった取り組みも堅調だという。TDFの公式ブログは継続的に1日に約2万アクセスを集めており、新たな取り組みとしては品質保証(Quality Assurance、以下QA)やデザインといった分野別のブログも始まった。

 続いて、LibreOffice Conferenceのスポンサーとして、CIBとCollabora Productivityの2社による講演があった。CIBは欧州を中心にドキュメント処理プロダクトの開発やドキュメントシステムの構築を専門とするシステムベンダーである。その一環として、LibreOfficeのシステムへの組み込みやサポートビジネスを展開している。Collabora ProductivityはLibreOfficeをベースにした「Collabora Office」と、オンライン版の「Collabora Online」を展開する。サポートビジネスにより、LibreOfficeの重要な機能追加や性能面の改善が行われるエコシステムが確実に存在していることを実感できた。

世界におけるLibreOfficeへの移行状況

 オープンではないオフィスソフトから、LibreOfficeに移行する話題は毎年、LibreOffice Conferenceの重要なトピックになっている。

 地元運営チームの1人であるSilva Arapi氏による「The Municipality of Tirana Migration to LibreOffice」はタイトル通り、ティラナ市行政のLibreOfficeの移行に関する発表だった。「オープンソースソフトウエアのアプローチによるITインフラの構築」を掲げており、そのカギとなるのが各行政区にバラバラに導入され、バージョン管理で混乱している、米マイクロソフトのオフィスソフト「Microsoft Office」からLibreOfficeへの移行だという。目的はベンダーロックイン(囲い込み)からの解放で、コスト削減は副次的なものだ。

ティラナのLibreOffice移行について説明するSilva Arapi氏
(撮影:小笠原 徳彦)
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 限られたIT系のスタッフによる市全行政の移行を成功させるため、全ての部門を一度に移行させるのではなく、最も人数が多く、かつ一番多くの(多様なバージョンにより作成された)Microsoft Office形式の文書を保有する人事部門から移行した。そこで得られた知見を踏まえて、他部門にも展開していった。先行して成功したイタリアのLibreOfficeコミュニティー(アルバニアはアドリア海を挟んで、地理的にも歴史的にもイタリアとの関係が深い)の協力を得られたことも大きかった。

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