2018年5月12日、GMO Yoursグランフロント大阪で、オープンソースのオフィスソフト「LibreOffice」のイベントが開催された。日本語で使っているユーザーのための年次イベント「LibreOffice Kaigi 2018」だ。このレポートでは、日本語チームのメンバーが、イベントを通じて明らかになったLibreOfficeの使いこなしや 展望を紹介する。

 LibreOffice Kaigiは、日本語である「会議」を冠している通り、LibreOfficeの日本語コミュニティによる日本語ユーザーのためのイベントである。2017年は国際イベントの「LibreOffice mini Conference」が開催されたので開催されなかった。今回は2016年の開催に続いて2回目となる。

開発者目線からの「6 x」

 今年のKaigi基調講演は、Toma Vajngerl氏による「LibreOffice 6 x from a developer point of view(開発者目線からのLibreOffice 6 x)」だった。Vajngerl 氏は欧州を中心にLibreOfficeのサポートビジネスを提供する、Collabora Productivityに所属するフルタイム開発者だ。

Toma Vajngerl 氏
(写真撮影:LibreOffice日本語チーム 近藤 昌貴、以下同じ)
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 講演では現在開発中である6.1や、それ以前に取り込まれた機能の中から、同氏が関わった機能がデモを交えて紹介された。既に6.0で利用可能なものとしては、ピボットグラフ、TSCP機密区分といったものがある。

 機能を追加するだけでなく、現在はJavaで実装されているNLPソルバーをC++で再実装したり、LibreOfficeのUIフレームワークであるVCLを大きく見直して安定性や速度を向上させたりする取り組みも行われているという。このような大幅な改善は、LibreOfficeプロジェクトの健全さを表していると言える。

 また、現在は実験的機能であるNotebookbar(Microsoft OfficeのリボンのようなUIを可能にするフレームワーク)も開発版では改善が進んでおり、標準化も近いとのことだ。

 フルタイム開発者ならではの視点に立つ、興味深い基調講演だった。

 続いて6つの一般講演が行われた。

 事前にすり合わせがあったわけではないが、登壇者公募に名乗り出た人の講演のうち、3つが「マクロ」に関するものだった。単なるオフィスソフトとして使うだけでなく、システムを構築し業務を改善するパーツとしてLibreOfficeを使うことに注目が集まっている表れだろう。

聴講者の手で動くようになる

 最初に登壇した荒川雄介氏による「PythonでgetRest関数を作るぞ!!」は、LibreOfficeと外部システムを連携するために、Calcに「RESTfulなWebサービスから値を取得する」セル関数getRestを追加する拡張機能を作成してみたという発表だった。

荒川 雄介 氏
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 LibreOffice CalcにPythonによってセル関数を追加できることを、この講演で知った人も多いのではないだろうか。なかなかまとまった情報がないところに、試行錯誤の過程を提示した本講演は意義のあるものだった。

 発表の時点では「試したけれどもうまく動かなかった」という内容だったが、後半では聴講者の手による修正リクエストが送られ、動くようになったのも素敵だった。

 続く川口 修氏による「『ファイル管理システム作成キット』及び開発中に気付いたチップスの紹介」では、LibreOffice Calcのマクロは便利だが、非ITの人にはハードルが高い…という問題意識に基づく発表がされた。

川口 修 氏
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 同氏が作成した「ファイル管理システム作成キット」は、IT担当者がいない中小企業の文書管理にLibreOffice Calcを利用するもの。IT専任者がいない事務所で800件を超える見積もり作成に活用している実績があるという。難しい技術を利用せず、シンプルな仕組みと工夫で柔軟性がある解決策を提供しているところが興味深い。

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