「インターネットがリアルの世界を上書きする時代に入ってきた。これから先、世の中はどう変わっていくのか」。IT評論家の尾原和啓氏はこう問いかけた。2019年3月5日、「アフターデジタル」をテーマにしたパネルディスカッションが開催された。尾原氏に加え、ビービット(beBit)東アジア営業責任者の藤井保文氏、パルコ 執行役グループデジタル推進室担当の林直孝氏、LINE 執行役員事業戦略室室長の室山真一郎氏が登壇。「オフライン」が消滅する世界の今後を議論した。

IT評論家の尾原和啓氏
撮影:下玉利 尚明=タンクフル
[画像のクリックで拡大表示]

 藤井氏はアフターデジタルという言葉を、「リアルの世界でデジタルツールが活用され、付加価値を生み出すのがビフォーデジタル。一方のアフターデジタルは、リアルが全てデジタルで包み込まれる世界」と定義する。アフターデジタルの世界は既に現実になりつつある。舞台は中国だ。「オフラインが存在しない状況」(藤井氏)という。

 診察予約から処方箋の受け取り、薬の配達依頼までがアプリで完結する。中国の四大保険会社の一角を成す中国平安保険の「平安グッドドクター」は全てのサービスをオンラインで完結させる。同社は自動車保険、損害保険、生命保険を手掛ける保険コングロマリットで、時価総額は26兆円以上。世界の保険会社トップ10に食い込む成長を遂げている。

 「医師版『食べログ』と『楽天ポイント』を組み合わせたようなアプリ」と藤井氏は評する。ユーザーが病気になると、症状に合わせて医師のレビューを閲覧、診察を予約できる。予約後、自動で整理券を発行。15分前になると通知するため、待合室でユーザーを待たせることもない。診察が終われば、デジタル処方箋を出す。この処方箋を基にユーザーは「Uber EATS」のように薬を自宅に配達してもらえる。決済もオンラインで終了しているという。

 平安保険のサービスはこれだけではない。ウオーキングなどの健康増進効果が期待できる行動に対して、ポイントを付与している。平安保険は個人における健康増進への取り組み、病気になった際の治療の進み具合、服薬状況など、「デジタルで日常をずっと見守れる状態を作り上げている。そこにオフラインは存在しない」と藤井氏は語る。

ビービット東アジア営業責任者の藤井保文氏
撮影:下玉利 尚明=タンクフル
[画像のクリックで拡大表示]

 アフターデジタルの世界では、今までにない、人間的な触れあいに基づく「ハイタッチ」なサービスが実現できるようになる。平安保険の営業担当者はアプリの利用履歴情報から、「以前に営業したAさんが子どもの病気で診察予約をしている」といったことが分かる。こうした情報を基に営業担当者は単に保険を売り込むのではなく、「下のお子さんをお預かりしましょうか」といった申し出をすることが可能だ。保険会社は「何かあった際のトラブル対応」ではなく、「顧客が困っていることや不安を感じていることに寄り添うハイタッチなサービスを提供する。それが平安保険の施策」と、藤井氏は紹介する。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら