2018年7月、ネットワーク機器メーカー最大手、米シスコシステムズ(Cisco Systems)の株価が乱高下する一幕があった。米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services、AWS)がネットワークスイッチ市場に参入するとの報道と、その否定報道を受けたものだ。背景にはホワイトボックス製品の台頭がある。

 今回の騒動の発端となったのは、米ニュースサイト「The Information」の7月13日(米国時間)の報道だ。AWSがホワイトボックスと呼ばれるメーカーのブランドが入らないスイッチと、オープンソースソフトウエア(OSS)のネットワークOSを組み合わせた法人向けスイッチ製品を18カ月以内に発売するとした。シスコの株価が5%下落しただけでなく、米ジュニパーネットワークス(Juniper Networks)や米アリスタネットワークス(Arista Networks)など同業の株価も下落した。

 しかし、7月19日に米ニュースサイトの「MarketWatch」がAWSによるネットワークスイッチ市場への参入を否定。各社の株価は報道前の水準に戻った。MarketWatchによればシスコのチャック・ロビン(Chuck Robbins)CEO(最高経営責任者)がAWSのアンデイー・ジャシー(Andy Jassy)CEOに直接連絡して、AWSが同市場に参入する予定ではないことを確認したのだという。

AWSのジャシーCEO(左)とシスコのロビンCEO(右)
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 AWSの動向で株価が乱高下する背景には、ネットワーク機器メーカーが置かれている苦境がある。既にAWSや米グーグル(Google)、米フェイスブック(Facebook)といった巨大なデータセンターを所有する大手クラウド事業者や大手ネットサービス事業者は、メーカー製のネットワーク機器を使っていない。これらの企業はネットワーク機器を自社開発し、ハードウエアを台湾などのODM(相手先ブランド設計製造業者)に作らせて利用している。

ホワイトボックス化が徐々に浸透

 現在、こうしたメーカー離れの動きが通信や金融、小売りなど他の業界にも広がりつつある。ODMがホワイトボックスのスイッチを一般企業に販売したり、スタートアップがOSSのネットワークOSのディストリビューション(検証済みパッケージ)を提供したりし始めた。そしてホワイトボックスのスイッチとOSSのネットワークOSを導入することで、メーカー製のスイッチを置き換えるユーザー企業が増えているのだ。

 この動きを支えるのが、フェイスブックの主導で2011年に誕生した「Open Compute Project(OCP)」だ。OCPはデータセンターで使用するサーバーやストレージ、ネットワーク機器、ラック、空冷装置などのハードウエアの仕様や設計図をオープンソースとして開発・公開する団体だ。OSSのネットワークOSである「Open Network Linux」の開発も進める。

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