株式時価総額で世界1、2位を争う存在になった米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)。だが、同社に対する米国社会の反感は高まる一方だ。2019年2月にはニューヨークでの第2本社(HQ2)の建設計画が地元の反発で撤回に追い込まれただけでなく、2018年に連邦税を1ドルも支払っていなかったことまで判明。有力政治家も怒りの声を上げ始めた。

 「ニューヨーカーの70%は我々の計画を支持しているが、国や地方自治体の一部政治家が我々の計画に反対し、協力する姿勢を見せていない」。アマゾンは2019年2月14日(米国時間)にこのような声明を発表し、従業員2万5000人が働く第2本社の建設計画を撤回するとした。

アマゾンが2018年11月に公表したニューヨーク第2本社の地図
(出所:米アマゾン・ドット・コム)
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 実際にアマゾンの計画に対しては、地方議員だけでなく国会議員が反対の声を上げていた。世界一の富豪となったジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏率いるアマゾンが第2本社を建設する見返りに、ニューヨーク州が17億ドル、ニューヨーク市が13億ドルの合計30億ドルもの助成金や税金の優遇措置を受けることが、特に反感を集めた。

 実はアマゾンが2018年11月にニューヨーク第2本社の計画を発表した際、自治体から受け取る助成金は15億ドルだと説明していた。しかしその後の報道で、実際にはその2倍に当たる30億ドルの優遇措置が与えられる見込みと判明した。

最年少女性議員が反対の急先鋒

 反対の急先鋒(せんぽう)は、2018年11月の米国中間選挙で史上最年少の女性下院議員となったニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏(Alexandria Ocasio-Cortez)。「立ち退きはコミュニティーの開発ではない。ぜいたくなコンドミニアムも同じだ。地元に住む人々や家族への恩恵にはならない」。オカシオコルテス下院議員が「Twitter」で行った発言は、地元住民の感情をよく表している。

 アマゾンはニューヨーク第2本社の建設により、平均年収15万ドル(約1600万円)の雇用が新たに2万5000人生まれると主張しているが、地元から採用されるとは限らない。それどころか別の場所から高収入の人々が移住してくることで家賃が高騰し、元から住んでいた住民が住めなくなる可能性がある。

 アマゾンが進出するのは、これまでオフィスが無かったクイーンズ地区の再開発地域となる。増えるオフィス人口に対応するため、地下鉄や道路などのインフラに税金を投じる必要が生じる。それにもかかわらず、アマゾンはコストを負担するどころか、税金の優遇措置を受けることに対して、オカシオコルテス下院議員は強く反発していた。

好意的だった市長も激怒

 今回、アマゾンがニューヨーク第2本社の計画撤回を唐突に発表したことは、これまで同社の味方だった政治家の離反も招いた。

 アマゾンの第2本社誘致に尽力したビル・デブラシオ(Bill de Blasio)ニューヨーク市長は2019年2月16日(米国時間)に米紙「ニューヨーク・タイムズ」に寄稿。アマゾンに対して「反対派を納得させるために労働組合の幹部に会ったり、公営住居に住む人々を雇用したり、交通インフラに投資したりすべきだ」と助言した直後に計画を撤回したことに怒りを表明した。

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