植物を取り込んだ居心地の良い空間づくりは古くから建築や土木のテーマの1つだった。政府や企業は近年、植物が人工的な環境に与える影響に注目している。例えば、国土交通省は2019年7月に自然環境を活用した持続可能な国土・都市づくりを具現化する「グリーンインフラ推進戦略」を公表した。国の後押しもあり、気候変動の影響による雨水管理や、建物利用者の心身の健康を守るため、建設分野における植物の積極活用が加速している。

都市再生機構(UR)が建て替えた賃貸住宅「シャレール荻窪」。植物や自然環境を活用して居住空間の快適性を高めた(写真:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 都市再生機構(UR)はグリーンインフラを活用したまちづくりを推進する事業者の1つ。運営する多くの団地で豊かな緑を計画的に配置する。11年に建て替えた賃貸住宅「シャレール荻窪」では、植物が団地全体や建物に与える効果を検証している。UR技術・コスト管理部の平井勝・都市環境計画課長は、「グリーンインフラは時間をかけて環境を育てる新しいインフラだ」と話す。

 例えば、シャレール荻窪の敷地内には内庭に多くの樹木を配置することで、都市部のヒートアイランド現象を緩和する効果が見られた。緑化したエリアは夜間に周辺市街地より1度ほど低い空気をためるため、団地内にクールスポットを生み出す効果がある。各戸のエアコンが消費する電力量を抑えることができるのだ。

シャレール荻窪の屋上緑化の様子。URは1993年に屋上緑化の実験を開始し、薄層化技術を確立した(写真:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]
URによる屋上緑化の仕組み(資料:都市再生機構)
[画像のクリックで拡大表示]

 URでは1993年から屋上緑化の実験を開始、薄く軽い層で芝生を張る技術を確立した。シャレール荻窪でも屋上緑化を採用しており、夏季の日中には緑化した芝生面と非緑化のコンクリート面の温度差が30度以上になる。屋上に敷いた芝生は建物の表面温度を下げるだけでなく、建物表面から放射される熱を抑制して、周辺の温度上昇を抑制する効果も確認されている。

 シャレール荻窪は敷地内の歩道に保水性舗装を取り入れた。舗装内の微細な隙間に雨水を蓄える作用があり、晴天時にこの雨水が徐々に蒸発することで路面の温度上昇を抑制する。平井課長は、「グリーンインフラを活用した団地は都市部で“田んぼ”の役割を果たす」と言う。かつては豪雨の雨水を水田が一時的に貯水することで、河川の水害を抑制した。団地などの一定の敷地面積を持った都市空間のグリーンインフラが水を蓄えることで、ゲリラ豪雨などによる被害の低減に役立てる狙いがある。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら