奈良県が進める奈良公園南端の県有地(奈良市高畑町)に高級ホテルを整備する「高畑町裁判所跡地保存管理・活用事業」に対して、建設予定地の近隣住民が再び「NO」を突き付けた。2019年8月6日、近隣住民8人が県を相手取り、「都市公園法上の『公園施設』を装わせて高級ホテルの建設を進めようとしている」として、ホテルの設置許可処分の取り消しを求める訴えを奈良地方裁判所に起こした。同計画に対する近隣住民が起こした訴訟は2件目となる。

奈良県が進める奈良公園内のホテル建設計画に対し、ホテルの設置許可処分の取り消しを求め訴状を奈良地方裁判所に提出する近隣住民(写真:奈良公園の環境を守る会)
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 訴状によると近隣住民は、都市公園法は県の整備計画にあるような高価格帯のホテルを便益施設として想定しておらず、県の設置許可は「一般公衆の自由な利用」という都市公園の目的に反すると訴えている。また、奈良公園が文化財保護法に基づく「名勝」や、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(古都保存法)に基づく「春日山歴史的風土保存地域」に指定されている点も強調した。

 県が17年7月に開催した地元説明会では、「名勝地にはホテルが建てられないはずだ」との質問が出た。この問いに対し県の担当者は、「公園区域であれば便益施設として宿泊施設や飲食施設を建てることが可能」と回答した。

奈良県がホテル開発を進める高畑町裁判所跡地の空撮(写真:奈良県)
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 奈良公園内で開発を進めるホテルは地上2階の鉄骨鉄筋コンクリート造で、延べ面積は約3950m2。民間が提案した施設を建設・運営するPPP(官民連携)を活用した。建築設計は隈研吾建築都市設計事務所を起用し、施工は浅沼組が担当する。同計画の事業者であるヒューリック(東京・中央)の広報担当者は、「19年2月に着工した。竣工は20年3月を目指している」と言う。完成したホテルは高級旅館「ふふ 奈良」として、ヒューリック子会社が運営する予定だ。

奈良県が開発を進めるホテルと飲食店の配置図(資料:奈良県)
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 奈良公園内のホテル整備計画に関する初の訴訟は、近隣住民56人が18年12月11日に「都市公園法などに違反している」として、県に現状変更と公金支出の差し止めを求めた訴えで、現在も係争中だ。同訴訟ではアウトドア用品大手モンベル会長の辰野勇氏が原告代表を務めた。奈良公園の至近に居住する原告適格(訴訟を提起する資格)を有する近隣住民として、今回の訴訟でも原告団に名を連ねた辰野氏は、「ホテルの建設工事は既に始まったが、県の処分が間違っているため、一歩踏み込んだ訴えを起こした」と説明する。

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