構造計算書偽造事件を契機に立法された住宅瑕疵(かし)担保履行法(履行法)は、間もなく2009年10月の本格施行から10年が経過する。これまでの制度運用を踏まえた議論が官民で活発化している。

 同制度で、多くの住宅会社になじみ深いのは、事実上の義務加入となっている住宅瑕疵担保責任保険(以下、瑕疵保険)だろう。「保険金が下りないケースやパターンがいくつもある」。そんな指摘が飛び出したのは、19年8月1日に日本弁護士連合会(日弁連)が東京都内で開いたシンポジウム。千代田区霞が関の弁護士会館で開催した「住宅瑕疵担保履行確保法施行10年目の現状と課題」だ。

 この指摘を投げかけたのは基調講演者の1人、河合敏男弁護士(河合敏男法律事務所)だ。住宅会社と住まい手の間で欠陥住宅紛争が巻き起こると、住宅瑕疵担保責任保険法人(以下、保険法人)を含む3者で住宅紛争審査会(各地の弁護士会に設置)における協議が行われる場合があるが、実際に次のような場面に遭遇したと話した。

 「保険法人が住宅会社の施工方法に『故意・重過失』があると主張して保険金支払いを拒否。住まい手の代理人である私が『重過失には当たらない』と住宅会社を弁護する羽目に陥った。保険金を原資としなければ紛争が解決できないからだ」(河合弁護士)。この制度が被害者救済のために十分機能しているのか、という投げかけだ。同じく基調講演者を務めた国土交通省住宅局住宅生産課の川合紀子・住宅瑕疵担保対策室長は、河合弁護士らとのパネルディスカッション〔写真1〕で、「モラルハザードは防ぐべき」と応じた。こうした催しに担当官が登壇するのは異例だ。

〔写真1〕日本弁護士連合会が開いたシンポジウム
2019年8月1日のシンポジウム「住宅瑕疵担保履行確保法施行10年目の現状と課題」で基調講演後に開催されたパネルディスカッション(写真:池谷 和浩)
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 保険法人が重過失を主張するのには理由があり、問題がある施工が成されていた可能性もある。そうした場合、まず住宅会社が自社で解決すべきだと川合室長は見解を語った。一線を引かなければ、住宅会社の「建て逃げ」を許す結果にもなりかねない。河合弁護士は、「瑕疵保険の制度は消費者保護のためのものなのだから、まず紛争解決が優先されるべきではないか」と自説を展開。「重過失に当たるとされるような重大事故ほど、住宅紛争審査会での解決が難しくなるという、制度の目的とは逆の結果を招いている」と指摘した。

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