次世代の研修施設の在り方を突き詰めた結果、大林組が導き出した答えは「高層建築物の木質化」だった。同社は2019年7月23日、すべての構造部材に木材を使用する日本初の高層純木造耐火ビルの建設に着手すると発表した。柱と梁(はり)に加えて床や壁も木質化する徹底ぶりだ。横浜市内で22年3月に竣工予定のこの建物は、自社の研修施設として活用する。

大林組が設計、施工を手掛ける高層純木造耐火ビルの完成予想図。2022年3月の完成予定で自社の研修施設として活用する(資料:大林組)
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 設計に携わった大林組設計本部プロジェクト設計部の伊藤泰部長は、「中規模建築物では鉄骨(S)造や鉄筋コンクリート(RC)造を木造に置き換える需要が近い将来に盛り上がるだろう」と予見する。「高層純木造は新しい構造形式となる。その有用性を広く理解してもらうには、まず当社がやり切って見せなければならない」(伊藤部長)

 同研修施設は20年3月に着工する。完成すれば地下1階・地上11階、延べ面積3620m2の純木造ビルとなる。3~8階は研修室に宿泊施設を併設。完成予想図を見ると、ガラスのファサードから屋内の木構造が骨格のように透けて見える。建物の内外で木の温かみを感じさせる意匠だ。

大林組の新しい研修施設は地下1階・地上11階、延べ面積3620m2の純木造ビルとなる。3~8階は研修室に宿泊施設を併設する(資料:大林組)
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 伊藤部長は、「木が身体に与える良い効果にも期待している」と言う。木の持つリラックス作用や保湿効果を生かし、建物利用者の心身の健康に焦点を当てた米国発の「WELL認証」や環境性能を評価する「LEED認証」の取得を目指す。空調熱負荷を最小化する環境技術もふんだんに導入する計画だ。

 純木造と聞いて気になるのは耐火性能だろう。横浜市中区の施工予定地は防火地域に指定されている。同研修施設は当然、耐火建築物となる。大林組設計本部本部長室の辻靖彦部長は、「高層純木造を横浜の繁華街に建てるには路面に近い低層階に特別な配慮が必要だ。念のため1階の柱は木造としては日本初となる3時間耐火を採用した」と話す。

大林組が2016年に開発した2時間耐火木造部材「オメガウッド」。高層純木造耐火ビルを実現するための重要な技術となる(資料:大林組)
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オメガウッドの内部構造。LVL(単板積層材)の荷重支持部材を石こうボードで覆い、表面に燃えしろ層として木を張り付ける3層構成となる(資料:大林組)
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 大林組は16年に汎用木材による2時間耐火木造部材「オメガウッド」を開発している。オメガウッドは3層構成の木造部材だ。単板を接着したLVL(単板積層材)を重ねて荷重支持部材とし、その周囲を耐火層となる石こうボードで覆う。表面の燃えしろ層にも木を使うことで、木質感を損なわない耐火木造部材となる。この技術を高層純木造耐火ビルに採用する。

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