2019年7月19日午前時点で死者33人。アニメ制作会社「京都アニメーション」(京都府宇治市)の京都市伏見区にある第1スタジオで18日午前に発生した火災は、放火事件としては平成以降で最悪の大惨事となった。京都市消防局によると前記死者の他に重症10人、中等症6人、軽症20人を救急搬送。火災は19日午前6時20分に鎮火した。

煙を上げるアニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオ。屋内に2つあった階段や窓を伝った外壁から急速に延焼したとみられる=18日午前11時36分(写真:共同通信社)
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 近隣住民から119番通報があったのは18日の午前10時35分ごろ。41歳の男が第1スタジオの1階でガソリンのような液体をまいて火を付けたとみられる。防耐火技術に詳しい早稲田大学創造工学部建築学科の長谷見雄二教授は、「ガソリンは蒸発して空気と混ざり短時間のうちに巨大な火の玉となる。1階にあった可燃物に燃え移った場合、同フロアは1~2分で火の海になっただろう」と分析する。

 長谷見教授が火災現場を中継映像で確認したのは18日午前11時過ぎ。同時刻の映像では「既に建物3階から炎が上がっているように見えた」と言う。出火の時間を考えると延焼するスピードは早過ぎる。「防火扉などをしっかり設置していれば、これほどの早さで上層階まで延焼しないのではないか」と長谷見教授は指摘する。

 京都市建築安全推進課の担当者によると、被災した第1スタジオは07年10月に完了検査済証が交付された。RC(鉄筋コンクリート)造3階建てで、延べ面積は691.02m2、最高高さ9.985m。主用途は事務所となる。防火地域・準防火地域に指定されない建築基準法22条指定区域に立っていた。

 1階の玄関付近には3階までを連絡する屋内らせん階段を設置していた。男はこのらせん階段に近い1階の玄関付近で可燃性の液体に火を放ったとみられる。

京都アニメーション第1スタジオの平面図と各階で死亡した人数(資料:京都市消防局の資料を基に日経xTECHが作成)
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 市消防局によると事務所や音声収録室があった1階で2人、制作スペースだった2階と3階ではそれぞれ11人と20人が命を落とした。屋上に向かう3階西側の階段で特に多くの死者が確認された。長谷見教授は2階より3階の方が先に煙が充満したと分析する。煙は上層階への開口部が大きいらせん階段から上昇したほか、西側にある内階段からも浸入した可能性がある。西側内階段には扉がなかったとみられ、煙はワンルームのような構造の各階に一気に広がったとみられる。

 第1スタジオはスプリンクラーを設置していなかったが、市消防局の担当者は「被災した建築物の用途と延べ面積であれば、消防法施行令12条によるスプリンクラーの設置義務がない」と説明する。

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