自然災害は発生前と発生中、発生後で、必要になるデータや地域住民に伝えるべき情報が違ってくる。地震や洪水が発生する前にそのエリアが抱える脆弱性から被害の予測ができれば、避難訓練やBCP(事業継続計画)プランが具体的になる。

 災害のフェーズに応じて収集すべきデータや使うテクノロジーは変わっていくので、得意・不得意の領域は企業によって異なる。そこでお互いの強みを持ち寄り、防災と減災のシステムを共同開発する動きが始まっている。

 先行するのは、2019年3月に提携した損害保険ジャパン日本興亜と、米シリコンバレーに本社がある2015年設立の防災スタートアップであるワンコンサーン(One Concern)、そしてウェザーニューズの3社連合だ。

 この3社は、日本初となる人工知能(AI)を用いた災害予測と防災・減災システムの構築を急いでいる。地震の被害や水害にたびたび遭っている熊本市をモデルケースにして、現在検証中である。損保ジャパン日本興亜と熊本市は2018年8月に、地域防災の相互協力で協定を結んでいる。実証実験はその一環であり、2019年9月には熊本市が防災AIシステムの本格利用を開始する予定だ。

 同年6月19日には3社が説明会を開き、開発途中のシステムの一部を報道陣に公開。デモを交えて、進捗状況や機能を紹介した。

防災・減災に特化したAIシステムを使って、熊本市の災害時の被害シミュレーションを実施(資料:米ワンコンサーン)
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 3社はそれぞれ、収集しているデータや分析ノウハウが違っており、相互補完によって相乗効果を狙えると考えている。

 例えばウェザーニューズは、日本固有の天候のデータを豊富に蓄積している。気象予測サービスを本業とする、天気予報のプロだ。

 一方、ワンコンサーンは、AIを用いた災害の被害予測で実績が多い。米国ではロサンゼルス市やサンフランシスコ市、シアトル市といった自治体にAIシステムを導入済みである。

 損保ジャパン日本興亜は災害発生後の保険金支払いに欠かせない、被害状況の正確な把握にたけている。

 3社が手を組めば、災害の「前・中・後」で、スピーディーかつ正確に対策を打てるというわけだ。熊本市もそれを期待している。熊本市で防災AIシステムが役立つことが証明されれば、自信を持って全国に横展開していける。

損害保険ジャパン日本興亜(左)と米ワンコンサーン(中央)、ウェザーニューズ(右)のトップがそろって説明会に出席した(写真:日経アーキテクチュア)
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