86%が工事に影響、8%が工事の受注を取りやめ――。鉄骨をつなぐ小さな部材、高力ボルトの不足問題が一向に収束しない。この事態を受けて国土交通省は2019年5月17日、建設業9団体に対し、高力ボルトの発注様式を統一するための協力を要請した。

国土交通省は2019年5月17日、高力ボルトの需給安定化のため、建設業9団体に向けて契約適正化の対応に関する協力を要請した(資料:国土交通省)
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 国交省作成の発注書に基づいた取引を徹底させ、事態の鎮静化を促す考えだ。国交省が特定の部材に関して、こうした具体的な対策に踏み込むのは異例だ。国交省の土地・建設産業局建設市場整備課労働資材対策室の松本直樹課長補佐は、「必要な場所に必要なだけのボルトが行き渡るようにするのが目的だ」と説明する。

国土交通省が示した標準的な発注様式。商社やボルトメーカー、建設会社、鉄骨ファブリケーターにヒアリングしながら国交省が作成した(資料:国土交通省)
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 発注書には、高力ボルトの納品先となる現場名などの記載を求める。建設会社や鉄骨ファブリケーターなどの需要側が工事を受注する前段階で先行発注や水増し発注をしたり、高力ボルトの納期遅延に備えた重複発注をしたりすることを抑制するためだ。これによって、高力ボルトメーカーが具体的な納入先や納期が決まっている注文から優先的に供給できる環境を整える。

 国交省は要請文と併せて示した資料で、高力ボルトの需要量は年間11万~13.9万トンと推計。一方、高力ボルトの推定供給能力は年間12万~13万トンとし、需要量と供給能力に大きな乖離(かいり)は見られないと分析した。このことから、一連の高力ボルト不足は「実需に基づくというよりは、むしろ市場の混乱による一時的な現象の可能性がある」と指摘。松本課長補佐は、「鉄骨需要量は近年上昇傾向にあるものの、18年度から続いている需給の逼迫の状況ほど増加しているわけではない。このことの認識を共有することも重要だ」と話す。

要請文と併せて国土交通省が示した高力ボルトの需給に関する資料。高力ボルトの需要量と供給能力には大きな乖離(かいり)は見られないと分析した(資料:国土交通省)
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