建築確認が取り消されて塩漬けになっている分譲マンション「ル・サンク小石川後楽園」。建築主はNIPPOと神鋼不動産だが、2019年5月9日にNIPPOのみが東京都を相手取り国家賠償法に基づく損害賠償請求の訴えを提起した(写真:日経アーキテクチュア)
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 完成間近で建築確認が取り消された分譲マンションの建築主であるNIPPO(東京都中央区)は2019年5月9日、東京都を相手取り国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に起こした。同社は東京都文京区で「ル・サンク小石川後楽園」の建設を進めていた。建物は完成間近で、全107戸が完売していたが、東京都建築審査会が15年11月に「1階が災害時に屋外に出られる避難階に該当しない」と判断、建築確認を取り消していた。

 NIPPOは、都審査会の建築確認取り消し裁決によって、「建物の工事を含むマンション事業の中断を余儀なくされた」と主張。マンション購入者に対する補償や建物の維持管理など、都審査会の裁決で発生した損害を「主位的請求」として、都に約50億6150万円を請求した。NIPPOはこの請求について、「都審査会の裁決は、認定、判断および審理手続きに関わる違法性があり、これらは都審査会の注意義務違反による」と主張する。

 同マンションの建築主はNIPPOと神鋼不動産。両社は都の裁決を不服として「建築確認取り消し」の取り消しを求める行政訴訟を継続している。18年12月の控訴審判決では、東京高等裁判所が両社の控訴を棄却。両社は上告を申し立て、最高裁判所に受理された。最高裁が都審査会の裁決の違法性を認めなかった場合の「予備的請求」として、NIPPOは事業完遂に必要な金額約107億円3418万円を都に請求した。

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 NIPPOは予備的請求の原因について、「指定確認検査機関が必要な注意義務を尽くさず、漫然と変更確認処分を行ったことについて、都が責任を負う立場にある」と主張する。建築主の1人である神鋼不動産は今回の損害賠償請求訴訟に名を連ねていない。神鋼不動産の関係者は、「社内では『最高裁の判決が出ていないため、都への損害賠償請求は見送る』と判断した」と話す。

 NIPPO法務部の担当者は、この時期の提訴について、「5月中旬が損害賠償の時効になる可能性があった」と説明する。国家賠償請求は、損害および加害者を知った時から3年間で賠償請求権が原則として時効消滅する。都審査会が確認申請を取り消す裁決をしたのは15年11月なので、本来の時効は18年11月になる。ただし、裁判外で賠償請求の催告をすると、その期限が6カ月延びるという例外がある。

 NIPPOと神鋼不動産は時効消滅が近づいた18年11月に、都知事宛ての内容証明郵便を送っており、賠償請求権の時効が19年5月に延びていた。

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