建築家・隈研吾氏(隈研吾建築都市設計事務所主宰)にとって英国初となるプロジェクト、「V&Aダンディー美術館」が多くの来館者を集めている。国際コンペから約8年を経て、2018年9月に開館。その後、わずか3週間で延べ約30万人が訪れた。川沿いに立つ美術館は、大きく2つのボリュームに分かれ、それぞれがねじれながら上部でつながる。それまで分断されていた川と街をつなぐため、「鳥居」をモチーフにしたものだ。隈氏に、美術館へのこだわりと、今後の建築設計の手法についてインタビューした。

英国ダンディー市に完成したV&Aダンディー美術館。北海へと流れるテイ川の河口沿いに立つ。手前に停泊保存されているのは、英国で最後に建造されたという3本のマスト船(写真:武藤 聖一)
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英国初のプロジェクトということで、意気込みはあったか。

 V&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)というのは英国最大のミュージアムであり、私たちにとっても特別なプロジェクトと考えて取り組んできた。予算のことなどで思っていたよりも長くかかったが、自分にとってひと区切りとなる重要な仕事だった。

V&Aダンディー美術館は、街からも川の対岸からもひと際目立つ。河口沿いの敷地条件は、美術館のコンセプトにどう影響したか。

 英国ダンディー市は倉庫街を一掃し、美術館と公園に生まれ変わらせるという都市計画の大きなビジョンを描いていた。スペイン・ビルバオが「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」で観光客を誘致し、大成功を収めたのと同じ形で、スコットランドの人たちはこのV&A分館の誘致に力を注いでいた。これは今までにない都市計画レベルでの大きな志があり、かなり面白い挑戦ができると感じて、市の意気込みに応えられる案をコンペで提出した。

川沿いの遊歩道から見た美術館(写真:武藤 聖一)
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 設計で常に意識していたのは、バウンダリー(境界)であること。これまでつくってきたような陸に立つ建物と違い、この場所は海と陸の境にある。要するに崖だなと。そこで、スコットランド北部にある有名な崖をいくつか見て回り、インスピレーションを得た。

 さらにこの建物は、海と陸、川と街、自然と都市の境に存在する一種のゲートでもある。日本の鳥居のようなイメージで、ゲートでありながら、分断されていたものを再接合することをコンセプトとした。

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