油圧機器メーカーのKYB(東京都港区)が公表したダンパー性能偽装の波紋が広がっている。10月16日、同社は子会社のカヤバシステムマシナリーが出荷した免震建物や制振構造向けのオイルダンパーについて、出荷前の検査データ改ざんが見つかったと公表した。改ざんは2003年には始まっていた可能性が高い。検査結果が減衰特性の基準値から大きく外れても、データを書き換えてそのまま出荷していたという。偽装が疑われる製品は約1万本。出荷先は987棟に達し、集合住宅や事務所ビル、病院、庁舎などが多数含まれる。

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国土交通省が入居している中央合同庁舎3号館も改ざんの疑いのある製品が設置されていた。物件名公表の会見があった10月19日に撮影(写真:池谷 和浩)
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 免震や制振を用いた建物には何本ものダンパーを取り付けるが、構造計算などは一定のばらつきがあることを前提に行われる。ばらつきの許容範囲を超える品質不良はまったく想定されておらず、影響は未知数だ。免震や制振は大地震時の継続使用性を重視した建物に使われるだけに、発注者、設計者、施工者に不安や混乱が広がっている。

10月19日に開かれた会見の様子。左はカヤバシステムマシナリーの広門茂喜代表取締役社長、KYBの斎藤圭介取締役専務執行役員(写真:池谷 和浩)
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 カヤバシステムマシナリーによると、オイルダンパーの検査工程では、試験機にダンパーを固定、ピストンを一定の速度で動かして、速度域ごとに減衰する力を測る。ダンパーには自動車のブレーキのような働きがあり、硬すぎれば動かず、柔らかすぎれば想定以上に大きく動いてしまう。ダンパーには各製品に基準値があり、減衰する力は各速度域ごとに大きすぎても小さすぎてもいけない。乖離値(ばらつき)は国土交通大臣認定における免震材料の場合で±15%以内と定められている。

データの書き換え行為の概要(資料:KYB)
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 同社は検査工程において、特性が許容範囲を超えてばらついていた場合でも、本来の試験方法にはない「波形処理係数」を勝手に加えてデータを整え、ダンパーの調整をせずに出荷していた。10月19日の会見でカヤバシステムマシナリーの広門茂喜社長は「工場への聞き取りによると、調整には1本当たり5時間近い時間が必要で、組み立て工程に負荷が掛かる。出荷の日程に間に合わなくなることから始まったようだ」と釈明した。

 事態は製造工場の従業員からの内部告発により発覚した。同社は9月8日に改ざんは事実と判断。国土交通省に報告したのは9月18日だった。内部告発があるまで会社は検査工程について社内的なチェックはしておらず、知らなかったのだという。極めてずさんな品質保証の実態が浮かび上がった。

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