日経 xTECH有料会員限定 現在はどなたでも閲覧可能です

 延べ面積で数百m2から数十万m2まで、日本設計で大小様々なプロジェクトの設計をリードする篠崎淳氏。特に大型プロジェクトは、ステークホルダー(利害関係者)が多数に上り、単純にことは運ばない。そんな状況のなかで取り組むのが、敷地の分析や、発注者との対話と一体になったプレゼンテーションだ。こうした方法の目的は。篠崎氏に聞いた。

設計プロジェクトのスタート段階ではどのようなプロセスを踏みますか。

 これは最近、特に心掛けていることですが、自分たちが案を発想する前に、敷地や、そのエリアを分析する手間をより多くかけるようにしています。これまで建築設計者は紙に向かってゼロから考えることを重視してきた感が強い。そうではなくて敷地で起こっていることを、どれだけ多様に拾い上げるかを重んじ、チームで実践するようにしています。

篠崎淳氏(日本設計執行役員フェロー)。しのざき・じゅん:1963年東京都生まれ。86年早稲田大学理工学部建築学科卒業、88年同大学理工学研究科修士課程修了、日本設計入社。建築設計群プリンシパルデザイナーを経て、現在執行役員フェロー。主な設計担当プロジェクトは、アクアマリンふくしま(2000年)、長岡造形大学第3アトリエ棟(10年)、虎ノ門ヒルズ(14年)、上越市立水族博物館(18年)(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば、ある東京都心のプロジェクトでは、太陽の位置による熱エネルギーの状況を「見える化」しています。たまたまその敷地は、ビル密集地の中にあるのに、他にないほど日当たりがいいので、街のなかの縁側のような場所になり得る。こうした分析を基に、案をどうしようか考えていきます。

 単体のプロジェクトでは、日射解析や風の解析などを1~2週間で一気にやる場合もあります。私の場合、担当するのは延べ面積が数百m2から数十万m2まで幅が広い。都市開発の規模になると1カ月ぐらい様々な検討を重ねています。発想する前になるべく多様な視点で捉えることを大切にしています。

その土地の持つ歴史よりも、物理的な要因を重視する?

 まずは地形、歴史、緑の分布などから入り、物理的な温熱環境や風の通り方などシミュレーション系のもの、さらに交通量や粉じんの量など、考えられる全てです。文学的なアプローチと科学的なアプローチの双方から分析して、その場所の特性、力、もしくは色みたいなものを読み込んでいくと、ここはこうあるべきではないかと、場所が語り始めます。自然にわき上がってくるような特性をすくい上げ、コンセプトに落とし込んでいきます。

 先日、受注したプロジェクトでは、1回目のプレゼンでは一切、アイデアは出していません。オフィスビルだったので、「オフィスには今、こういうことが求められています」といったニーズのほか、今ある敷地の特性の捉え方を説明しました。

 クライアントは独自のテーマをお持ちだったので、それを語っていただいた。社会的なニーズと場所の特性、つくる側のニーズがいっぺんに共有できます。そこから調和点を1つにまとめて示すのがプレゼンテーションです。「これがテーマなんじゃありませんか」と。分析とプレゼンテーション、コミュニケーションは、我々は三位一体だと考えています。こうしたプロセスを踏むと、クライアントと心が1つになりやすいですね。