築地市場から豊洲市場への移転について、その課題を協議してきた「市場問題プロジェクトチーム(PT)」は、2017年3月に「築地市場の改修」という新たな選択肢を提示する。築地市場の機能を維持したまま7年かけて建屋を改修する新計画に、市場関係者の意見は割れた。PT委員で東北芸術工科大学教授の竹内昌義氏は、築地市場の既存建物の一部を解体して種地をつくり、新築した建物に引っ越しを繰り返す改修案を練った。なぜ築地市場改修案がPTで突如、提案されたのか。竹内氏に聞いた。

竹内昌義氏。東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科教授。1962年神奈川県生まれ。85年に東京工業大学工学部建築学科卒業。88年東京工業大学大学院修士課程修了。2001年から東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科助教授を務める。08年から現職。『みかんぐみ』共同代表。エネルギーまちづくり社代表取締役(写真:みかんぐみ)
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「市場問題プロジェクトチーム(PT)」では築地市場改修案を提案した。豊洲市場のオープンを間近に控えた今、現在の状況をどのようにみているか。

 豊洲市場への移転は残念に思います。「決まった予定は変更できず、スクラップ・アンド・ビルドの都市開発は変えられない」という行政の惰性を感じました。小池百合子都知事はそれを止めようとしたのでしょうが、止めることはできませんでしたね。市場問題PTのミッションは豊洲市場への移転や、市場の在り方に関して選択肢を用意することでした。市場移転をできるだけ多くの角度から検証して、判断するための材料を集める。市場問題PTの中では私が一番、既存の築地市場を生かすという考えに近かったと思います。

(関連記事:築地市場「改修」が急浮上 事業費734億円の現実味

市場問題プロジェクトチームが2017年3月に発表した築地市場の改修案。総事業費は734億円。種地をつくって段階的に改修するプランで、約7年かけて築地市場を屋内化する計画案を示していた(資料:市場問題プロジェクトチーム)
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なぜ、築地市場の存続に注力したのか。

 私は歴史的な建築物が持つ記念碑的な力を信じています。築地市場を再生すれば、「東京の台所」を表現できるという思いがありました。築地市場の解体は、市場が育んできた文化の喪失につながります。確かに、築地市場の流通量は減少しており、時代の流れによって市場には変化が必要です。それでも、仲卸などは魚介類の知識の宝庫。海外からの旅行者が、「東京にお寿司を食べに行こう」と考える下地には、築地市場で働く仲買人の目利きの技術があります。

 建築的な観点からのメリットを説明すれば、築地市場は平面に広がる空間を持っています。市場機能が分断しない仕組みなのです。その空間が市場で働く人々の往来を生み、目には見えない市場文化を形成してきました。仲買人の専門的な技術も、そうした市場空間が磨き、今日まで引き継がれてきた。築地市場改修案の作成にあたって、3カ月ほど仲卸の方々にヒアリングをしています。そこで分かったのは平面的な空間を生かしたコミュニケーションや、目に見えない仕組みでした。

 築地市場を解体すれば、そうしたソフトが失われるでしょう。文化の喪失によって東京の食の市場機能がどのように変化するかは、まだ分かりません。

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