旧都城市民会館を20年間無償貸与されていた南九州学園が、都城市に返還を申し入れた。建築家・菊竹清訓氏(1928~2011年)の設計で1966年に完成し、メタボリズムの代表例に挙げられることも多い有名建築だ。日本建築学会は5月末、具体的な活用提案やコストを示した報告書を市に提出した。学会が報告書提出を決めるまでを振り返った前編に続き、今回は報告書の詳細をお伝えする。

東側から見下ろした旧都城市民会館の全景。1966年の竣工当初は、外部鉄骨のまわりに耐火被覆のモルタルが張られていた(写真:齋藤 信吾)
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 都城市のウェブサイトを見ると、5月末に提出された日本建築学会の報告書の前に、2018年2月28日付のもう1つの報告書が掲載されている。「旧都城市民会館今後のあり方検討業務報告書・概要版」と題するこのリポートは、昨年末に旧都城市民会館の返還を申し入れた南九州学園がパシフィックコンサルタンツに依頼してまとめたものだ。3月の都城市定例議会では、この報告書に基づいて保存の場合の事業費などが説明された。

南九州学園がパシフィックコンサルタンツに依頼して作成した「旧都城市民会館今後のあり方検討業務報告書・概要版」の一部。5つのパターンを挙げ、概算事業費や課題などを比較している(資料:都城市のウェブサイトより)
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 今回、日本建築学会が異例の速さで報告書をまとめることになったのは、この2月28日付報告書に“対案”を示すという意味合いも大きかった。日本建築学会会長で日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会委員長を務める古谷誠章氏(早稲田大学教授、ナスカ共同代表)はこう語る。「2月に提出された報告書では完全保存の場合の概算事業費が約42億円となっており、そこまで高くはならないだろうと感じた。市民アンケートでこの金額が資料になると、解体の票が多くなることが予想される。学会のなかの再生プロジェクトの専門家を集めて議論することにした」

日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会が提出した報告書(暫定版)の一部。左ページで費用の目安を概算している(資料:日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会)
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 学会が5月末に提出した報告書では、全体活用した場合の工事費の目安を約8億4000万円としている。2月の報告書で示された費用の2割にすぎず、差額でいうと34億円にもなる。

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