10年前にいったんは保存活用が決まった旧都城市民会館が再び保存論議に揺れている。建築家・菊竹清訓氏(1928~2011年)の設計で1966年に完成し、2006年に閉館した。保存を求める声の高まりを受け、南九州学園に無償貸与されたが、全く使われないまま10年が経過。同学園が市に返還を申し出た。これを受け日本建築学会は5月末、保存活用のたたき台(報告書)を市に提出した。まずは、これまでの経緯と報告書の一部を紹介する。

旧都城市民会館の現況。鉄筋コンクリート造の下部構造の上に、扇を広げるようにコの字の鉄骨フレームを架け、屋根を吊っている。メタボリズムの代表的事例に挙げられることも多い(写真:日経アーキテクチュア)
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日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会が5月末に都城市に提出した報告書(概要版)の表紙。6月6日の夜に市のウェブサイトに掲示された(資料:日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会)
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 日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会は5月31日、宮崎県都城市に「都城市民会館再生活用計画」の報告書(暫定版)を提出した。日本建築学会(以下、学会)の会長を務める古谷誠章氏(早稲田大学教授、ナスカ共同代表)が検討委員会委員長として自ら指揮をとって作成したもので、とりまとめは鹿児島大学の鰺坂徹教授が中心になった。鰺坂教授は三菱地所設計勤務時代に国際文化会館(東京・六本木、1955年竣工)の再生プロジェクト(2006年)を担当するなど、この分野のエキスパートの1人だ。

報告書の中の活用提案を示した部分の1枚目(資料:日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会)
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活用提案の具体例の1つ、「スポーツ施設」に転用する場合のイメージ。報告書ではこれを含め、計6つの活用方法を提案している(資料:日本建築学会都城市民会館再生活用計画検討特別委員会)

 古谷氏や鰺坂氏のほか、以下のメンバーが委員会に参加した(所属は報告書の表記)。

 青木茂氏(首都大学東京)、遠藤勝勧氏(元菊竹清訓建築設計事務所)、小川勝利氏(小川勝利建築設計事務所)、斎藤信吾氏(早稲田大学)、菅順二氏(竹中工務店)、仙田満氏(東京工業大学)、徳田光弘氏(九州工業大学)、野原文男氏(日建設計)、林田義伸氏(都城工業高等専門学校)、長谷見雄二氏(早稲田大学)、平井充氏(メグロ建築研究所)、山﨑鯛介氏(東京工業大学)、依田定和氏(ORS事務所)。

 これまでも多くの保存要望書を出してきた学会だが、今回は単に保存を求めるのではなく、具体的な転用パターンについて改修コストを含めて示す報告書となっている。異例ともいえる踏み込んだ内容だ。なぜ、学会がそうした提案書を提出することになったのか。

 旧都城市民会館を巡る保存論議の発端は2005年に遡る。都城市内にほぼ同じ用途を持つ都城総合文化ホールが開館したのが06年10月。その1年前の05年12月、市の職員で構成する都城市民会館管理運営対策プロジェクトチームは、「総合文化ホール開館後に速やかに現会館を解体すべき」と結論付けた。

 他方、日本建築学会九州支部などが保存要望書を提出したり、市民団体が保存を求める請願書を市議会に提出したりするなどの動きが、06年以降に活発になっていった。

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