青森県弘前市の「弘前市芸術文化施設(仮称)」が5月9日、2020年春のオープンに向けて着工した。既存の赤レンガ倉庫を美術館として再生し、中心市街地の回遊性やにぎわいを向上させる計画だ。設計を手掛けるのは、フランス・パリを拠点とするATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS(アトリエ・ツヨシ・タネ・アーキテクツ)の田根剛代表。改修の内容や建築を保存することの価値についてインタビューした。2回に分けて紹介する。

青森県弘前市で改修工事が始まった「弘前市芸術文化施設(仮称)」の完成イメージ。図は、2棟の間を通す「ミュージアム・ロード」と呼ぶメーンのアプローチ。右は美術館棟で、左の棟にカフェやミュージアムが入る(資料:ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS)
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――「弘前市芸術文化施設(仮称)」はどのような美術館を予定しているのでしょうか。プロジェクトの概要とデザインのコンセプトを教えてください。

 「吉野町煉瓦倉庫」(旧吉井酒造煉瓦倉庫)は、1923年ごろに完成した建物です。それをコンバージョンして美術館棟とカフェ棟を設けます。2棟の間には、ミュージアム・ロードと呼ぶパブリックスペースを通すなど、全体のランドスケープからデザインしました。

建築家。1979年東京生まれ。2002年北海道東海大学芸術工学部建築学科を卒業。ヘニング・ラーセン事務所(デンマーク)や、デビッド・アジャイ・アソシエイツ(英国)などを経て、06年にエストニア国立博物館の国際コンペに優勝。同年にDGT.をダン・ドレル氏、リナ・ゴットメ氏と共同で設立した。17年にATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTSとして独立した(写真:山田 愼二)
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 プロジェクトでは、ただ建物の外側を残すのではなく、既存のレンガ倉庫が持つ大空間の魅力を生かし、大きく吹き抜けた展示室もつくります。

倉庫の大空間を生かした最高天井高さ15mの展示室(資料:ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS)
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 唯一、既存の屋根は重い印象があったので、それを刷新するために大掛かりな変更を加えます。元の建物は、実は日本で初めて大々的にシードルを製造した工場だったと知り、それがヒントとなって、屋根をシャンパン・ゴールドならぬ「シードル・ゴールド」にしようという発想が浮かびました。

 朝の青く白い光ではシルバーに、夕焼けでは金色に輝き、光の移ろいと共に屋根の表情が変わることで、弘前に新たな風景をつくり出す現代的な魅力のある建築になると思います。

「弘前市芸術文化施設(仮称)」の模型写真。金属製屋根を既存屋根の上に架ける(写真:ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS)
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 また、敷地がJR弘前駅と弘前公園の間に位置するので、利用者には街の中心から歩いて来てもらうことを考えています。美術館の前にはあえて駐車場をつくらず、市内の貸し駐車場を利用してもらえれば、地域経済にとっても効果が期待できます。

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