しゃがんだ姿勢で接着剤を塗っていた作業者に、青い火が走るように迫った。接着剤が燃え広がり、作業者は火に包まれた――。

 建築現場での火災事故で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負い、休業を余儀なくされたとして、作業者(発症時54歳の男性)が元請けの建設会社などを訴えた裁判で争われた事故だ。長野地方裁判所松本支部は2018年3月28日、原告の主張を一部認め、元請けの建設会社と元請けの現場監督、下請けの内装工事会社代表に対し、連帯して約780万円を支払うよう命じた。原告と複数の被告は判決を不服として、東京高等裁判所に控訴した。

 判決によると、火災事故が起こったのは09年3月4日。元請けの建設会社はシマコー(12年に綿半ホールディングスが吸収合併)だ。同社は2階建て託児所の新築工事を受注して工事中だったが、スケジュールが遅れていた。そこで現場監督が内装工事の助っ人として原告を事故の前日に呼び、作業を進めてもらっていた。

 事故当時、原告はコルク床の施工準備の依頼を受け、1階で床材の裏に接着剤を塗布していた。この接着剤は有機溶剤系で引火性があり、「火気厳禁」という注意書きもあった。

 判決の事実認定によると、午後5時ごろ、原告が作業していた部屋に接するトイレで、下請けの内装工事会社の作業者が床材を張り始めた。この際、長尺の床材を床と壁の取り合い位置で折り曲げるために、ガストーチを使っていた。

 判決は、トーチの炎が接着剤から揮発した成分を含む空気に引火、原告が並べたコルク床の裏面の接着剤へ火が燃え広がったと認定した〔図1〕。

〔図1〕ガストーチから引火
火災があった託児所1階。換気が不十分な状態でガストーチを使った結果、有機溶剤系接着剤に引火した(資料:判決添付資料を基に日経ホームビルダーが作成)
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