世界中でセクシャル・ハラスメントへの批判が厳しくなっているなか、建築界で大きなスキャンダルが発覚した。米国でモダニズム建築の重鎮といわれてきたリチャード・マイヤー氏(83歳)が、1980年代から2009年にかけてセクハラ行為を繰り返していたことが判明。事態を重くみた米国建築家協会ニューヨーク支部(AIA NY)は、マイヤー氏に授与した賞を剥奪すると発表した。日経アーキテクチュアは、マイヤー氏の設計事務所や複数の業界団体に対応を、被害者の1人に現在の心境を取材した。その内容を前後編に分けて伝える。

写真中央の男性が、米国の建築家リチャード・マイヤー氏。写真は2015年7月に撮影された(写真:Sonia Moskowitz/Getty Images)
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 マイヤー氏は、建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカー建築賞を、1984年に最年少で受賞した、いわゆる“巨匠”だ。20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエの継承者と評されることもあった。日本では、97年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している。

 これまでに「ゲッティ・センター」(米・ロサンゼルス、1997年開業)をはじめ、世界各国で美術館や公共施設などの設計を手掛けてきた。日本では、三菱地所レジデンスと鹿島が開発した「ザ・パークハウス 晴海タワーズ」(東京・晴海、2016年完成)の外観デザインなどに携わった。

米国ロサンゼルスに立つ複合施設「ゲッティ・センター」。マイヤー氏が手掛けた代表的な建築の1つだ(写真:ロイター/アフロ)
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 マイヤー氏のセクハラ行為が発覚したのは、米ニューヨーク・タイムズ紙による3月13日付(米国の現地時間)の記事がきっかけだった。同紙はその記事で、マイヤー氏が女性部下など5人に対してセクハラ行為を繰り返し行っていたという告発を報じた。

 告発の内容は、1980年代から2009年にかけて、マイヤー氏から「仕事の手伝いと称して自宅に呼ばれ、服を脱ぐよう命じられた」「裸を見せられた」「公のパーティーの場で、服の上からパンツのひもを引っ張られた」などのセクハラ行為を受けたとするものだ。同氏の部下のみならず、社外の仕事関係者にも被害が及んでおり、極めて悪質なものだった。

 米・ニューヨークとロサンゼルスに事務所を構える、マイヤー氏の設計事務所「リチャード・マイヤー・アンド・パートナーズ」では、経営陣らを含めた多くの所員が同氏の度重なるセクハラ行為を把握していたという。

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