台湾東部で現地時間の2月6日、地震によって複数の高層ビルが倒壊した。なかでも被害の大きかった12階建ての「雲門翠堤大楼」について、推定される倒壊メカニズムを前回(2月16日公開)の記事 で紹介した。今回は現場の状況や図面のほか、和田章・東京工業大学名誉教授などが語った推測を手掛かりに倒壊の原因をひもとく。

台湾東部の花蓮市で地震被害を調査する和田章・東京工業大学名誉教授(左)。右の2人は構造エンジニアで台南市結構工程技師公会の施忠賢常務理事(中)と彭光聡氏(右)。2月11日に撮影(写真:菅原 由依子)
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 現場を視察した和田章・東京工業大学名誉教授は、まず建物を高さ方向に見たときの、剛性や強度のバランスの悪さを倒壊の一因として推測した。1~3階の低層部分はレストランやホテルが入居し、広い空間を求めて壁の少ないプランとしていた。かたや4~12階は集合住宅などが入って壁が多かった。

雲門翠堤大楼を東側から見る(写真:菅原 由依子)
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雲門翠堤大楼は30度以上大きく傾いた。サッシ越しに折れ曲がった柱が見える(写真:菅原 由依子)
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 「低層部ほど、上階の鉄筋コンクリートを支えるために丈夫でないとならないはず。しかし、この建物は低層部が相対的に弱い構造をしていた。しかも偏心によるねじれ振動も起こったと考えられ、剛性と強度におけるバランスの悪さが被害を招いた」と和田名誉教授は言う。偏心が倒壊を招いたのではないかという推測メカニズムは、前回(2月16日公開)の記事で1階平面図と共に紹介したので参照してほしい。

現場では、行方不明者の捜索と同時に、建築や土木の専門家たちが被害の実態調査を進めていた(写真:菅原 由依子)
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 柱の本数と太さにも問題があった。花蓮県政府建設課の担当者によれば、各柱の太さは約800mm角という。図面を見ると、約8380mmのスパンで柱が配置されていた。「12階建ての建物としては柱の間隔が広く、日本と比べると本数が少ないように見えた」と和田名誉教授。

 破壊された柱からは、鉄筋の施工にも問題があったように見受けられた。「800mm角の柱としては過剰な量の主筋が入っている」(和田名誉教授)。過剰な量の主筋を入れると、周りを囲むコンクリートの主筋を抑える能力が低下し、上下から圧縮力を受けた場合に柱が壊れやすくなる。

断裂した柱の様子。約800mm角とみられ、中には主筋が密に配置されていた。また、同じ高さで重ね継ぎ手が外れていることも見て取れる(写真:菅原 由依子)
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 しかもこの建物では主筋をまとめて拘束するための帯筋が少なく、帯筋の端部を曲げるフックも90度と浅かった。日本の場合は1995年の阪神・淡路大震災以降、厳しく言われるようになって135度フックが浸透している。

 破壊された柱から、主筋は同じ高さで重ね継ぎ手されていたことも分かった。同じ高さで継ぎ手をすると、今回のように上下に引っ張られたときには一斉に同じ場所で主筋が抜けてしまう。

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