ここ数年で、人工知能(AI)の普及が本格的に進んでいる。特に注目されるのは、米アマゾン、米グーグル、米マイクロソフトといった、米国のIT巨人3社がAIの主導権を巡り激しい競争を繰り広げている点だ。日本企業には、AIを利活用するためのハードルが急速に下がってきた中で、その上でどのようなビジネスモデルを構築するかという創意工夫が求められそうだ。

ディープラーニングが変えたAI

 AIが急速に普及した背景には「人間の脳の構造を模したニューラルネットワークを活用するディープラーニング(深層学習)の研究が進んだこと」「インターネットやIoT(Internet of Things)の普及で分析に使えるデータ量が飛躍的に増大したこと」「大量のデータを並列処理可能なGPUの登場で高速な計算環境が拡充されたこと」などがある。

 ディープラーニングを利用するメリットの一つは、データにどのような特徴があるかという「特徴量」を学習を通じてAIが自動的に獲得できる点である。従来は、人間が特徴量を考える必要があり、時間が必要であったり、精度が上がらないといった課題があった。

 ディープラーニングの利用で飛躍的に性能が向上したのは画像解析の部分である。がん検診などの医療分野でAIを活用した画像診断が使われるほか、自動運転や産業用ロボットなどの分野でも利活用が進むと考えられる。

 ディープラーニングは画像診断だけでなく、音声認識や自然言語処理などにも活用できる。例えば、自然言語処理分野であればグーグルが提供する機械翻訳の仕組みをディープラーニングに切り替えたことで、翻訳の品質が飛躍的に向上したと指摘されている。

 ディープラーニングの将来的な発展については意見が分かれるが、人間との会話の中での背景情報(コンテクスト)も含め言葉の意味を理解し、自然な形で人間とのコミュニケーションが可能になるといった自然言語処理分野での活用が期待されている。

「AIの民主化」だれでも利用可能

 AIが発展し利用シーンの広がりと普及が進む中で、トレンドとなってきているのが「AIの民主化」だ。AIの民主化に一義的な定義があるわけではないが、筆者は「専門的な知識がなくとも、AIを利活用できること」と理解している。

 もう少し具体的に説明すると、AI開発には、数学的素養、プログラミング技術、学習のための大量のデータが必要だ。これらすべてを備えているのは、一部の大手IT企業や研究機関に限られていた。

 しかし、AIブームを背景に、グーグル、アマゾン、マイクロソフトといった大手IT会社は、自社開発した学習済みのAIをクラウドやAPIを通じて外部にサービスとして提供することで「新たな収入源の確保」と「自社AIのさらなる精度向上に必要なデータの収集」ができることに気がついた。そこで、「画像解析」、「音声認識」、「検索」といった多様な機能を次々と外部へ提供し始めたのだ。

 これにより、これまで大きなネックとなっていたAI自体の開発は大手IT企業に任せ、そのAIをパーツとして自社サービスに組み込む形が生まれたといえる。クラウドAI/APIを提供する大手IT企業各社は既に多数の機能をAPIなどを通じて提供しており、競争の激化が見られるようになってきている。

 このように、ディープラーニングの進展やAI活用のために必要なデータや計算処理といった環境条件が整ったこと、また一部の企業や研究機関のみしか利用できなかったAIがクラウドやAPIを通じて容易に利用できるようになったことからAIの普及、すなわち「AIの民主化」が進んだと考えられる。

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