NetflixやHuluといった動画ストリーミングサービスが普及し、世の中には動画コンテンツが洪水のようにあふれるようになった。同時に、コンテンツを等倍よりも速く再生する「倍速視聴」も当たり前になりつつある。倍速視聴の普及は単純な時間の効率化だけでなく、制作者と視聴者の間の力関係を変えコンテンツの消費傾向に大きく影響する可能性もある。

NetflixやHulu、dTV、Amazon Prime Videoなどの動画ストリーミングサービスが急激に普及している
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倍速視聴のインパクトは時間節約だけではない

 筆者も動画ストリーミングサービスのヘビーユース視聴者の一人だ。動画ストリーミングサービスの登場以前、筆者はDVDレンタルで“24”などのシリーズものドラマをよく見ていた。このドラマが大ヒットしていた当時、1つのシーズンを一気に見るという視聴スタイルが流行していた。“24”は1話が作中の1時間に相当し、1つのシーズンが全24話で構成されている。実時間では1話が約45分であるため、各シーズンの一気視聴には18時間が必要となる。睡眠時間などを考慮すると、ほぼ丸1日を費やすことになるわけだ。

 だが、再生速度を2倍にすれば単純計算で“24”の各シーズンを半分の9時間で見終えることができる。浮いた9時間を有効活用すれば、より有意義な休日を過ごすことができるだろう。だが、実際に体験してみた筆者としては、倍速視聴を単なる時間を効率的に使うライフハックとしてしか扱わないのは不満だ。

 倍速視聴の是非について、国内外を問わずインターネット上でしばしば議論が巻き起こっている。そこで、筆者自身の実体験を交えながら、倍速視聴が動画コンテンツや視聴者に与えるインパクトについて考察してみよう。なお、今回は便宜上、2倍速に限らず通常の再生速度(等速)よりも速い再生速度で動画コンテンツを視聴することを「倍速視聴」と呼び、その良し悪しを論じるものではないことはあらかじめ付記しておく。

倍速視聴が当たり前に

 効率性の向上は人類の永遠の課題であり、何かを通常より速くこなそうというのは誰しもが考えることだ。その点で、倍速視聴は決して新しいことではなく、古くからある習慣の派生物と言えるだろう。技術的にも、VHSのビデオテープが市販され始めた1970年代には既に倍速視聴が可能な環境があった。

 しかし、従来と現在とで決定的に異なるのは、再生速度を上げてもキチンと「視聴」できる点だ。ビデオ時代の倍速視聴は早送りすると映像が乱れて音声が高くなるのが当たり前だったが、現在はデジタル化が進み倍速再生時の映像や音声の不自然さを解消する技術が導入されている。

 再生速度の調節はほとんどの動画サービスで可能だ。例えば、YouTubeやdTVはアプリ自体に再生速度を調節できる機能が実装されている。YouTubeの場合、0.25倍速、0.5倍速、0.75倍速、等速、1.25倍速、1.5倍速、2倍速の7段階から再生速度を選択できる。NetflixやAmazon Prime Video、U-NEXTなどにはアプリには機能がないものの、Google Chromeの拡張機能を利用すれば再生速度を調節できる。ハードウエアに関しても、0.1倍刻みで細かく再生速度を調節できるブルーレイプレイヤーなどが一般的になってきている。

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