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 2016年4月の熊本地震で落橋した国道325号の阿蘇大橋。周囲の地盤もろとも崩壊し、長さ205mのアーチ橋は崖下に飲み込まれた。

 中堅ゼネコンの安藤ハザマは、阿蘇大橋架け替えのための準備工事を受注した。新しい阿蘇大橋の建設予定地から不安定な土を取り除き、谷底に続く工事用道路を設ける。不安定な地山を対象とした斜面の工事は、常に危険と隣り合わせだ。見えない岩盤の切れ目から一気に崩れ出すこともある。安藤ハザマ地質技術チームの宇津木慎司部長は、「工事を安全に進めるには、斜面全体の土の動きを3次元で常に監視できる体制が理想的だ」と説明する。

 そんな理想をかなえる装置として同社が期待を寄せるのが、地上設置型合成開口レーダー(GB-SAR)だ。この現場で自主的に試験活用し、精度を検証してきた。

崩落した阿蘇大橋の架け替え準備工が進む現場から約2km離れた高台に、GB-SARを設置した
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今回の試験活用では、エフティーエス(東京都中央区)から借り入れたイタリア製の機材を使った
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 一般に、合成開口レーダーは航空機や衛星に搭載して標高などを測るのに使う。地表面に向かって電波を発射し、その反射波を観測して距離や方向を明らかにする。それに対してGB-SARは地上に置いた機材を使い、同じ原理で対象物との距離を面的に測る。

 観測時にはレール上を移動しながら、2つのアンテナで電波の送受信を繰り返す。レールの各地点で集めたデータを組み合わせ、巨大なアンテナなしでも広範囲で高精度な観測が可能だ。機種によっては、観測する対象物から約4km離れた地点でもミリ単位の精度で計測できる。