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 土木で3D活用が進んでいる工種の1つが、造成などに伴う土工事だ。出来形の3次元モデルを作成して「ICT建機」に取り込めば、モデル通りの盛り土を築くことができる。仕上がり面の位置の目印になる「丁張り」などの設置の手間が軽減されるので、生産性向上に大いに役立つ。

 ところが土木工事では、この3次元モデルをつくるのがやっかいな場合がある。工業製品などの3次元モデルとは異なり、土木分野では自然を相手にするため、不規則な形状を表現する場面があるのだ。細かな部分までモデルを作り込もうとすれば、必要以上の作業負担が生じてしまう。

 ただし、データの作り方を工夫すれば、複雑な形状でもそれほど手間をかけず思い通りに3次元化できる。川原建設(大分県中津市)が2015年に施工した山国川上曽木地区の護岸工事は、その好例の1つ。同工事では、現場の詳細な完成模型を作り、その形状をレーザースキャナーで読み取ることで、重機のマシンコントロールに必要な3次元モデルを作成した。

山国川上曽木地区の岩の掘削範囲を再現した模型。凹凸を目立たせるため、幅と奥行きは実物の100分の1、高さは同50分の1のサイズで作成した
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山国川の景観ガイドラインで残すことが求められた巨岩部
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 施工現場は耶馬日田英彦山(やばひたひこさん)国定公園の中にあった。火山活動でできた特殊な岩盤層が広く分布する地域だ。現場を流れる山国川の周辺は、「凝灰角(ぎょうかいかく)れき岩」と呼ぶ岩盤層が浸食されてできた珍しい形の岩が多く残り、景勝地として知られる。

 発注者の国土交通省九州地方整備局は、景観を保つために自然の岩を必要以上に削らないよう求めていた。当時、現場の所長を務めた川原建設工務第一課の酒井清志課長は、「周辺の自然になじむように、岩が波打つような形状に仕上げる必要があった」と説明する。