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 新潟県内にある事務所の一室。ドアを開けると、机や椅子のないがらんとした空間で、眼鏡形の端末を着け、天井を見上げる男性がいた。たまにのぞき込むように首を傾け、何もない空間に手を伸ばす。はたから見ると、やや滑稽な動きだ。

 この男性は何をしているのか。その答えを探るため、男性と同じ端末を着け、専用のシステムを起動した。すると、それまで見えていた現実の風景に、天井すれすれまで伸びた橋脚の3次元モデルが浮かび上がった。男性が見つめる先に映っていたのは橋脚と桁の接合部。実物大のスケールで設計を確認していたようだ──。

「Microsoft HoloLens」を装着すると、会議室の中に実物大の橋梁の3次元モデルが現れた(出所:小柳建設)
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 以上は、小柳(おやなぎ)建設(新潟県三条市)と日本マイクロソフトが共同で開発を進める「Holostruction(ホロストラクション)」のデモ中の1コマだ。Holostructionは現実空間に3次元モデルを映すMR(Mixed Reality、複合現実)を使った建設業向けの情報共有システム。名称は、立体映像を意味する「ホログラム」と、建設を意味する「コンストラクション」とを組み合わせた造語だ。

 使用する端末は米マイクロソフトが開発し、2017年から日本で販売を始めた「Microsoft HoloLens(以下、ホロレンズ)」。日本マイクロソフトによれば、建設会社によるホロレンズの実証は国内初だ。

 建設分野でも、3次元の映像で仮想的な空間をつくり上げるVR(仮想現実)や、現実空間の映像に各種の情報を重ねて表示するAR(拡張現実)を導入する事例が増えてきた。例えばVRを使った現場体験システムで、施工手順や危険箇所を施工前に確認し、施工管理や安全管理に生かす。ARでは、供用中のトンネルの映像に、事前に登録しておいたひび割れ展開図などを重ねて映し、点検の効率化を図る――。いずれも、生産性や品質を高めるための取り組みだ。このVRとARを足し合わせたものがMRだ。